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OCDと併発しやすい心の病気
OCDスペクトラム障害


OCDで治療を受けている方のなかには、病名を2つ以上持つという方も少なくないのではないでしょうか。第3回目のコラム ⇒(OCDコラム:OCDの人はうつ病になりやすい?)でとりあげたように、OCD患者が併発する病気のなかで、最も多いというデータがあるのはうつ病ですが、そのほかにもさまざまな心の病気がOCDと併発して現れる場合があります。

なかには、OCDなのか他の病気なのか、診断することが難しいようなケースもあるといいます。そうした病気の多くには、どうしても何かをせずにはいられないという強迫的な思考と、それに伴う反復行為が症状として見られます。

こうした心の病気の一群を「OCDスペクトラム障害(OCSD)」と呼び、OCD研究の一つの分野となっています。今回は、OCDと密接な関係があると考えられている心の病気をいくつか紹介します。


●自分の顔や体の外見が気になってしかたがない……身体醜形障害(BDD)

他人から見ると気づかない程度の顔の傷や、鼻など体の特定の部分の大きさ、左右の形の違いなどがひどく気になり、自分の体には欠陥があると思い込んでしまう病気です。その欠陥を隠そうとしてさまざまな儀式を行い、確認を繰り返して時間を浪費したりします。外出ができなくなるなど、社会恐怖(対人恐怖症)に苦しめられる場合もあります。

「あなたの外見は正常です」と何度保証されても満足できず、重症の場合は外科手術を希望することもあります。OCDや社会恐怖と診断された患者のなかには、一定の割合で身体醜形障害の患者がいると報告されています。1995年に発表されたアメリカの調査では、有病率は1%とされていますが、患者が自分の身体醜形恐怖を医師にも言わない傾向があるため、実際はもっと多いのではないかと推測されています。SSRI⇒(OCDの治療法:薬物療法)など、OCDに有効な薬が有効な場合があります。


●ある動作や発声を繰り返すチック症状がおさまらない……トゥレット症候群

トゥレット症候群は、チックを主な症状とする神経の病気です。まばたきを繰り返す、繰り返し顔をしかめる、肩をすくめるといった単純な「運動チック」は多くの人に見られる神経性の癖で、自然になくなっていきますが、トゥレット症候群ではコントロールできないほどチックがひどくなり、日常生活にも支障が出ます。

運動チックでは、首を振ったり、人や物に触ったり、体をねじるなどの複雑な動きを伴います。そのほか、奇声を発したり、咳払いをしたり、ある言葉を繰り返す「音声チック」も代表的な症状です。

トゥレット症候群の患者のなかには、OCDを併発している患者が高率でいます。そのことから、OCDとトゥレット症候群には、脳内神経回路の働きなどで同じ病因があるのではないかと考えられていますが、どのようなメカニズムによるものなのかはまだ解明されていません。患者には男性が多いのが特徴です。

一般集団とトゥレット症候群の患者の親族を比較した調査では、トゥレット症候群患者の親族のほうが、12~17%程度、OCDにかかる率が高いという報告があることから、遺伝的な要素もあるのではないかと推測されています。治療には薬物療法が行われます。

トゥレット症候群についてもっと詳しく知りたい方は、日本トゥレット協会のホームページへ。
http://tourette.jp/info.htm


●病気にかかっていると思い込んで気に病む……心気症

OCDとの境界線が非常に不明瞭な病気のひとつです。心気症の患者は、たとえば胸が痛いと心臓病にかかっているのではないか、肺がんではないかなど、自分が重大な病気になっていると思い込み、検査をして「異常なし」と言われても納得しません。検査ではわからない隠れた病気があるのではないかと、いくつも病院を訪ねたり、気に病んで時間を浪費します。

うつ病の患者は、ちょっとした体の異変にも過剰に不安になる場合があります。OCDの患者のなかにも、細菌への汚染など健康に関する強迫観念を持つケースは非常に多く、繰り返し確認と保証を求めます。心気症とOCDを併発している場合も多くあります。


●自分が太っていると思い込み、拒食と過食を繰り返す……摂食障害

摂食障害はダイエットをきっかけに発症することが多く、患者のほとんどは女性です。他人から見るとやせていても自分が太っていると思い込み、極端な食事制限をしてやせすぎになります。また、その反動で過食となり、拒食と過食を繰り返します。

海外の研究では、OCD患者は摂食障害になる傾向が強いという調査報告もあります(Rubensteinら 1992)。また、摂食障害の患者の中には、OCDやうつ病を合併するケースがあります。摂食障害の患者は治療に抵抗を示す場合が多いのですが、OCDと同じ治療法が効果を示すという報告もありました(Wood 1993, Roberts and Lydiard 1994)。

平成16年11月に行われたOCD研究会では、国立病院機構東京医療センター精神科の宗未来先生と、慶應義塾大学保険管理センターの大野裕先生が、OCDと摂食障害の合併症の症例研究を報告しました。

研究はまだ途上ですが、OCDが神経性食欲不振症の主要な危険因子のひとつになっているのではないかという近年の研究報告を踏まえ、OCDに対する行動療法⇒(OCDの治療法:行動療法)が摂食症状の改善につながった例と、神経性食欲不振症に対する認知行動療法がOCDの症状改善に有効だった例が報告されました。

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ほかにも、自分の頭髪を無意識に抜いてしまう抜毛癖、リストカットなどの自傷行為、知的な能力の高い自閉症ともいえるアスペルガー症候群などがOCDスペクトラム障害と位置づけられています。

一口にOCDといっても、症状の表れは年齢・性別によっても違い、人それぞれなのです。OCDの治療法の研究は、こうした多くの心の病気を広い範囲で視野に入れながら進められています。


※参考文献:スチュアート・モンゴメリー、ジョゼフ・ゾハー著 OCD研究会訳 『強迫性障害』