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OCD体験者座談会2014 Vol.2(全2回)
不潔恐怖と社会生活の両立


OCDの患者さんたちの多くは、病気を抱えながらも、家族や身近な人々に囲まれて暮らしているでしょうし、友人や同僚など他人とも付き合っていることでしょう。生きていくうえでは、社会と関わっていかなくてはならないときが多くあります。前回に引き続き、自らもOCDの経験をもつ精神保健福祉士の有園正俊さんに司会をしてもらい、不潔恐怖を抱えるチェリーさんとバナナさんにお話を伺いました。今回は周囲の人と付き合っていくときに感じる思いと実際の体験について主に語っていただきました。
このコラムを読んでくださる皆さんが抱えている症状の内容や状況はさまざまだと思われます。ですから、このコラムで語られていることと自分や自分を取り巻く環境とを比べて、よいとか悪いとか評価をしないようにしてください。家族や周囲の人がどの程度、OCDを理解してくれるかも異なりますので、周囲の人に病気への理解を求めすぎるとトラブルになることがあります。


目次
§1 家族とのトラブル
§2 周囲の人はOCDを理解してくれるか
§3 外の汚れへの危機と自然の良さ
§4 OCDを抱えての学業・仕事
§5 あとがき


§1 家族とのトラブル

有園
OCDに関することでご家族ともめることはありますか。

チェリー
ちょっとけんかになることはあります。でも、家族に対しては申し訳ないと思いながら生活をしている感じです。OCDの症状がひどいときは、ご飯を作ることもできなくてただ家にいるだけ、「何にもしてないのに、私、ここにいていいんだろうか」と思っていました。

バナナ
だんなさんはこの病気を知っていて結婚したんですよね?

チェリー
はい。だから、すごい人だなと思っています。そういう人と一緒にいられるということはすごくよかったと思います。あまりよろしくないことでも受け入れてくれる人と巡り会えたことは、病気にはなってしまったけど、よいこともあったかな。なかには離婚になる人もいるでしょうし。

バナナ
理解がある旦那さんですが、「そこに、いてもらいたくないんだけど」など、伝えられずに我慢することはありますか。

チェリー

我慢することもあるし、口にしてけんかになることもあります。以前は、我慢している思いを流したいがために手洗いをしていましたが、最近は、「ああ、普通の人はこういうものね」「まあまあ、取りあえずいいか」と思えるようになってきましたし、「そう、思おう」と意識的に頑張ることもあります。主人は性格的には、きちんとしていると思いますけど、だからといって、そんなに細かいというわけではなく、普通の人じゃないですかね。

有園
お風呂やトイレの使用で家族と問題になることはありませんか。

バナナ
そうですね。父と兄は、お風呂に入る時間が決まっているんです。だから、私はその時間を避けて帰ってきたりして、調整できるんです。でも、母親とはこの間もちょっと派手にもめました。

チェリー
私も家族とはそんな感じだけど、友達には遠慮しちゃうところがあって、あまり出掛けなくなりました。この病気について話していない友達もいるし、話したことで、かえって気まずくなった人もいるし。



§2 周囲の人はOCDを理解してくれるか

有園
家族以外でこの病気について話している人はいますか。

チェリー
話していますね。友達では 2人ぐらいだけど、職場の人は知っているから。

バナナ
職場の人はみんな知っているんですか?!

チェリー
知っています。「強迫症状がひどくなってきたので、仕事を辞めようか」と思っていたときがあって、経営者に話したら「だったら、勤務時間を減らして、働けばいいんじゃない? 辞めることないよ」といわれました。そのときに、一緒に働いている人も病気のことを受け入れてくれて。初めて病気のことを話した仕事先です。

バナナ

私も、症状を隠しておける状態のときはいわなかったんですけど、だんだん症状がエスカレートしてきてからは、話すようになりました。話してみて思ったのは、話したからといって何かが変わるわけじゃないし、私の場合は離れていく人もいなかったから、意外と理解があると思っています。今年になって、学校でスリッパに履き替えなくてはいけない実習があって、そのとき先生に、スリッパに履き替えられないことを話したら、「じゃあ、どうしたらできる?」と聞いてくれました。結局、スリッパを出してもらって、私の靴に誰も触らないで、脱ぎっぱなし、履きっぱなし、家と同じようにしてみたらいいのではないかと提案されて、その実習に参加することができました。
以前、先生に親が話したときには、「昔、職員でその病気の人がいて、誰かを切りつけたことがあるって聞いたことがある」といわれたそうです。その後、保健室の先生が担任の先生に強迫性障害の説明してくれたと思うのですが、「きょうはくせい」という響きからなのか、そういうふうに受け取る人もいるみたいです。

チェリー
「脅迫」しているのか! みたいな?

バナナ
同じように話しても、人によって対応が違います。自然に受け入れてくれる人もいるし、「そんなことやっていたら、びっくりしちゃうよ!」みたいな感じの先生もいるし。

チェリー
私も、強迫性障害について他人に話していないときは、人と接すること自体が嫌というか、怖かったと思います。病気のことをある程度受け入れてくれた人以外は、取りあえず当たり障りなくやっていればいいという感じで、深く付き合おうとは思わなくなっちゃっていました。でも、後になって友達からは「いってくれればよかったのに」といわれたので、考え過ぎだったのかな、とも思います。

バナナ
周りの人が気を使っているせいか、自分から口を開かない限り、向こうから病気について聞いてくることはないですね。

有園
聞きづらいところですね。でも、見られることはあるわけですよね。

チェリー
この病気って、ほかの人から見られていることを、本人も気づいているじゃないですか。「ああ、今、変なふうに思われている」とか「今見られている」とわかってしまって。だから、苦しい。

バナナ
手を洗うときも、知り合いがいると、見られたくないと思って、違うフロアのトイレを使うとか、そういう気は使っています。

有園
人から見られると、強迫行為に集中できずに、うまくいかなくなり、意識しちゃうじゃないですか。そういうとき、手洗いなどをやり直したりしますか。

バナナ
手洗いの最中に話し掛けられると、「何回洗ったかな」「これでいいんだっけ」とわからなくなってしまう。

チェリー
そばに人がいるということ自体で、もう緊張しちゃう。



§3 外の汚れへの危機と自然の良さ

有園
ちなみに、今、部屋は片付いていますか(笑)。

バナナ
3.11、東日本大地震のときの揺れで、たんすの引き出しが開いてしまい、不潔だと思うものにぶつかったものだから、それ以来たんすが閉められなかったのを、去年の春くらいに、ようやく閉めることができました。

チェリー
洋服とか洗濯したものでも、ちょっと時間がたつと、「これ、洗ったんだっけ」と不安になってきて、たたまずにそのままにしてしまうことがあり、だんだんそれが多くなってきて、洗濯物を置いている部屋は衣装部屋みたいな感じになってしまいました。今は衣装部屋になっていても、洗濯物はたたんでいますし、「そろそろきれいにしていこうか」と思い始めている感じです。

有園
忘れ物をして、家に取りに帰らなくてはいけないときに困ることはないですか。

バナナ
まず、忘れ物をしないように気をつけています。前に、忘れ物を取りに家に入らなくてはいけなくなり、足でノックして、ドアを親に開けてもらったことがあります。

有園
家に修理や点検の人が来るときはどうしていますか。

チェリー
エアコンの設置工事では「どうも」みたいな感じで対応して我慢していたのですが、工事の人が帰ったら「うわ、気になる」と思って拭いたりしました。「ほかのところはきれいなのに、触ったところだけ汚れている」と感じてしまって。それから何カ月もかけて、だんだん受け入れていけるようになるんですが、それまでは近づかないとか、触らないとか、触ったらウェットティッシュで拭くとか、手洗いとか、いろいろしていますね。

バナナ
うちも、排水溝のパイプを取り換える工事がありました。同じマンションの他の世帯は、みんな工事をしていましたが、やらなかったのはうちだけ。消防点検も、怒られてからやり始めたって感じですね。

チェリー
消防点検は、取りあえず受けているんだけど、火災報知器っていろんな部屋についているから開けないといけない。でも、見せたくないです。不潔恐怖というと、部屋などすごくきれいにしているイメージですが、実はそういうことではないんです。家の中にあるものでも、汚いと思っちゃうと、それは受け入れられなくて触れられなくなるから片付けられなくなる。はたから見たら「そのほうが嫌じゃない?」と思うでしょうが。

バナナ
そうそうそう。「どこが不潔恐怖なの?」って感じで(笑)。掃除機もかけないんです。もっぱら使い捨てシートを使った拭き掃除ですね。

有園
旅行などではどうですか。

バナナ
私は、高野山に行ってきました。ただ、泊まるところが……。本当は洋室を選べばよかったんですけど、和室を選んじゃったものだから、ちょっと大変でした。でも、病気をもちながらも新しいことにチャレンジできて、うれしかったです。

有園
高野山のどういうところに魅かれるの?

バナナ
やっぱり自然。

有園
自然。強迫性障害って、大地に根を下ろした自然な生活からは、かけ離れた病気じゃないですか。私がこの病気だった約25年前、都会に暮らし部屋にこもりがちで、本当に昼夜逆転した人工的な生活していたわけですよ。そんな生活をしていたことが、病気に影響を与えたのではという思いがありました。一時期、たまってしまったゴミを捨てるのにも、確認がひどくて時間がかかっていましたが、昼間、少しでも片づけようと努力しました。また、平日の昼間に散歩するのは、すこし恥ずかしかったのですが、出かけるようにして、以前の生活に近づくようにしていきました。

バナナ
高野山への旅行で、心配していた割には、意外とちゃんとできたことは、結構、自信にはなったのかな。

有園
飛行機みたいに、荷物を棚か床に置くしかないという状況になると、どこに置いたかわからない他人のカバンと一緒の棚にでも荷物を置くことが案外できることってない? 人って、選択の余地があるとなるべく自分の都合のよいほうを選んじゃうわけで、OCDの人はもっと切迫した感じで、できるだけ清潔で自分の都合のよいものを選びがちです。しかし、選択肢が与えられないと、案外できちゃうとか。

チェリー
確かに、私は、ものすごくお腹が痛いとか、熱が出てぼーっとしていたりすると「赤いものなんて問題じゃないよ、今」となることはありますね。

バナナ
私は病院で、靴を履き替えなくちゃいけないことがあって、「わあ、どうしよう」と思ったんですが、「変だと思われたら嫌だ」と、思い切って履き替えることができたんです。でも、そのときに触った財布とかは、もう使えないです。



§4 OCDを抱えての学業・仕事

有園
それでは、お二人の治療の話を少し聞かせてください。

チェリー
私は治療を受けてから、ちょっと前向きになってきたというか、やる気が出てきたというか、変化がありました。悪いときは「怖いから、なるべくなら動きたくない」という感じだったのが「頑張ってみるか」というふうに変わりました。それでも好不調の波があって、私は生理のとき、もともと落ち込んだりしていたから、今でも駄目な気分になるときがありますが、それ以外のときは前向きになったように思います。前の治療では薬を飲んでいただけだから、「効いているの?」「よくわからない」みたいに疑心暗鬼になっていた部分がありましたが、認知行動療法を受けてから、今は、自分が頑張るしかないと思うようになりました。

バナナ
今、お薬は飲んでいますか?

チェリー
今は飲んでいます。1回、勝手にやめちゃって。薬をやめて不安が増したかといったら、そんなに変わらない感じがしたから、そのままやめちゃったんですけど。でも、薬をやめて1年ぐらいたってから、結局症状がだんだんひどくなってきて。主人からも、「病院へ行ったほうがいいんじゃない」といわれて、もう一回治療することにしたんです。病院に行ってよかったです。病院へいく前は、極端なことをいうと、生きていても面白くないと思っていたほどですから。

バナナ
私はずっと続けてお薬を飲んでいます。

有園
お二人とも病気を抱えながら学校や仕事を続けていますが、大変なことはありますか。また、逆に学校や仕事を続けていることでよかったと思うことはありますか。

バナナ
今年に入ってから思ったんですけど、勇気をもってこの病気をカミングアウトしたり、先生に相談したりしてみて、周りの理解を得ることで解決できることもあると思うようになりました。なかには「なんで自分の靴が触れないんだよ」とか「なまけてる」「甘えている」と思う人もいるようだけど、「どうやったらできるか」を考えてくれて「そこだけが駄目なだけで、ほかのことは普通にできるから、その点だけを考慮して、みんなと普通にやってみようか」と受け入れてもらうこともありました。

有園
チェリーさんは症状を抱えながら仕事していく上で、大変なことはありますか。

チェリー
仕事との両立が大変というより、私の場合は逆に何もしないほうがひどくなっていく気がします。家からまったく出なくて、外からのものを遮断したまま、びくびくした生活を送ってしまう気がするから、働いていてよかったと思います。一時、本当に仕事がしたくなかったときもあったけど、辞めなくてよかったです。症状がひどかったりすると「病院に行くのだって、いっぱい、いっぱいなのに……」と、外出すること自体が難しいと思いがちですが、たとえば、今日の座談会みたいなものだって、外出の機会になり治療につながると思うようにしています。少しずつ外出もできるようになってきたと思うんです。そのぶん、今日みたいな用事がある日とか仕事の日に、外での用事をいっぺんに済ませることがあります。

バナナ
そうですね。外に出掛けた日は、お風呂の時間もやっぱり長くなるので、できれば用事はまとめてやっちゃいたいと思います。

スタッフ
病気になったことで、自分が思い描いていた将来と変わってしまったことはありますか。

チェリー
病気になる前は、どちらかというと基本的には横着で適当な感じだったと思いますが、今は、一生懸命、さまざまなことを確認している自分がいます。「大丈夫。適当でいいじゃん」とは、なっていません。少し前までは、病気に対して「なんでこんなふうになっちゃったんだろう」「早く治さなきゃ」と感じていましたが、最近「病気の全部が治らなくても楽になればいいんじゃないか」と思い始めたり、病気が原因で嫌なこととかあっても、家族との絆じゃないですけど、主人と一緒に話し合ったり、そこからやっていけるようになっているということは、悪いことばかりじゃないのかと感じています。ただ、相手に対しては申し訳ないと思うので、もう少しよくなればいいと思いますけど。

バナナ
私はこの病気になる前から、もともと神経質で、小学校の頃は先生から「アライグマ」といわれていたぐらい。この病気になって、行動療法を始めて、苦手なことをあえてやってみたのですが、できないことがあると、そのたびに「ああ、なんて駄目なんだろう」と落ち込んでしまって。カウンセラーさんには「逃げていてはよくならない」といわれるけど、それができなくて。病気をもっている自分を「駄目だ、駄目だ」と責めて、できないことばかりに目を向けていました。今は、ひんぱんに手を洗いながらも学校に通っていますし、病気のことを話したら、受け入れてくれる先生もいたし、周りの理解を得ながら、自分ができることに目を向けていくのもいいかなと思っています。もちろん病気をこのままにしていてよいという問題ではないのですが。

有園
長時間ありがとうございました。最後に今日の感想を聞かせてください。

チェリー
強迫性障害って、「私もそうです」と周りに患者さんがいる病気ではないから、バナナさんのお話を聞いて「ああ、あるある」とすごく思ったし、共感できるというか、座談会に参加してよかったです。病気がひどいときには、別のOCDの人から強迫症状の話を聞くと、その人の症状をもらってしまうようなところがありました。その人が「道路が駄目で……」という話を聞くと、私まで道路が気になって仕方がない時期がありました。でも、今は、「そうなんだ」「頑張ろうね」みたいになってきたから。今日は座談会に参加してよかったと思います。

バナナ
私も、最近病気について話をするときがなかったから、久しぶりにいっぱい話して、相手にも共感してもらえる部分があって、すっきりしたじゃないけど、よかったです。

有園
このコラムを読んでくれた方々のなかには、お二人の話に共感する人が結構いるのではないかと思います。参加していただきまして、ありがとうございました。



§5 あとがき


OCDを家族や周囲の人に理解していただくのは、難しい場合があります。今回、座談会に参加していただいたお二人は、病気を周囲に告げたことで、学業や仕事を続けられましたが、常にうまくいくとは限りません。そのため、周囲の人にOCDであることを告白したほうがいいのかという問いに対しては、一概には判断ができません。

OCDによって学業や仕事を続けることが困難な場合、学校や職場と、話し合い、相談することは大切です。長期間休業したり、辞めるくらいなら、勤務時間などを調整してもらいながらも継続したほうがいい場合もあります。しかし、OCDという病気であることを周囲に話して理解してもらうことと、その症状である強迫行為を行えるように便宜を図ってもらうことは全く違います。強迫行為が行いやすい環境を整えることは、強迫症状への巻き込みとなってしまいます。そのため、強迫行為ができて一時的には安堵感を得られても、その後、強迫症状が悪化しかねません。周囲の人にOCDという病気を話し、正確に理解してもらうことは、簡単なことではありません。そのあたりの判断が、非常に難しいのです。

OCDは、強迫観念と強迫行為の悪循環のしくみを知って、できるだけ悪化しないように心がけるといいのです。強迫症状のような自分だけの特別な考えや行為にこだわるよりも、周囲の人や社会に合わせて行動できるようにするという姿勢をなくさないでほしいと思います。
最後になりますが、座談会で、体験を語ってくれたお二人に感謝いたします。