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OCDコラム

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強迫性障害(OCD)のお薬Q&A ②
さまざまな状況での薬への疑問

強迫性障害(OCD)の治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による薬物療法が広く行われています。しかし、患者さんやそのご家族のなかには、もともと薬に対して疑問や抵抗感をいだいている人が少なくありません。また、服薬したが思うような効果が得られなかったという人もいるかもしれません。胃腸薬や風邪薬、頭痛薬のように薬を飲んですぐに効果が現れる薬とOCDなどに用いられる薬は、その特性が大きく異なります。そこをしっかりと理解して治療を行う必要があります。

OCDの薬物治療の主要な薬であるSSRIと脳内の物質セロトニンとの関係や、薬の効果とはどのようなものかなどを知ることで、薬物治療を安心して安全に受けてもらえると思います。今回のコラムでは、OCDの薬物治療を理解してより効果的に受けるためのポイントをQ&A方式で紹介します。


目次
Q1 OCDでもSSRI以外の精神病薬が使われることがありますか?
Q2 発達障害を併存していると薬物療法に影響がありますか?
Q3 抗不安薬でOCDは改善できないのでしょうか?
Q4 薬を飲まないと不調になるのはなぜですか?
Q5 子どもへの薬物療法は何歳くらいから可能なのでしょうか?
Q6 妊娠中や授乳中の女性は薬物療法を受けられないのでしょうか?
Q7 服薬期間中にお酒を飲んでもかまわないでしょうか?
Q8 OCDへの新しい薬はできないのでしょうか?


 OCDでもSSRI以外の精神科の薬が使われることがありますか?

薬物療法を開始する際に、医師は患者さんに使用する薬の説明をします。その薬で得られるメリットと副作用を含めたデメリットを説明し、患者さんの納得を得て、はじめて治療が開始されます。OCDの患者さんのなかには、OCD以外の精神症状を併発している方も少なくなく、その場合、病状や年齢に合わせて他の精神科の薬が使われることもあります。[1]

また、SSRIだけでは効果がみられないOCDの患者さんに対して、抗精神病薬を加えることで効果が現れることがあります。このような場合は、とくに、その治療に関する説明を十分に聞いて、納得してから服用されるとよいと思います。

抗精神病薬とは、主に統合失調症という精神疾患に使用される薬剤で強い不安や興奮、幻聴・妄想などの症状に対して用いられる薬です。例えば、リスペリドン(商品名:リスパダール)、オランザピン(商品名:ジプレキサ)、クエチアピン(商品名:セロクエル)、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)といった比較的新しいタイプの非定型抗精神病薬をSSRIに少量加え、併用することが考えられます。ただし、これらの抗精神病薬も、患者さんによっては耐えられない副作用が現れることがあるために服薬ができないこともあります。また、薬物療法は治療の第一選択になりますが、すべての人に有効というわけでもないことを頭の片隅にとどめ、薬物療法と同時に、OCDという病気のしくみを理解しながら、OCDの悪循環に陥らないように気をつけましょう。


 発達障害を併存していると薬物療法に影響がありますか?

自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥/多動性障害(AD/HD)のような発達障害を抱えていると、二次的にOCDを発症することがあります。発達障害の患者さんのなかには、特定の感覚や刺激に過敏な体質の人がおり、薬物療法において副作用が出現しやすい傾向があります。そのため、副作用等の問題がなく使用できる薬を見極めるまでに、注意深く投与するなど、ある程度の期間を要します。一般の成人に比べ、ごく少量から処方していったほうがよいでしょう。


 抗不安薬でOCDは改善できないのでしょうか?

OCDの患者さんに対して、抗不安薬であるブロマゼパム(商品名:レキソタン)、エチゾラム(商品名:デパス)などが処方されることがあります。抗不安薬には一時的に不安を和らげる効果があり、OCDの患者さんにも使用されることがありますが、根本的な強迫症状の改善は難しいといわざるを得ません。

また、不安から逃げたいからと抗不安薬を長期間服薬し続けると、依存性が生じて、薬を止めることが難しくなることがあります。

OCDを改善するには、薬物療法を受けている場合でも、強迫症状の悪循環が緩和されないと難しいため、不安から逃げるのではなく、不安を受け入れるくらいの気持ちになって治療を進めていけるとよいでしょう。


 薬を飲まないと不調になるのはなぜですか?

SSRIは、毎日、服薬することで、体内にある程度の薬物濃度を保つことが必要です。SSRIを服薬している人が、薬を急に数日間、中断すると心身に不調が現れることがあります。これを離脱症状といいます。

前回のコラムでもお話しましたが、SSRIは服用を始めてから効果が現れるまでに、しばらく期間がかかります。その間、徐々に体内のいろいろな部位が薬に順応していきます。いったん順応した後に、服薬を急に止めると、その反動が生じることがあるのです。

強迫症状への薬の効果が感じられない人の場合も、急に服薬を中断すると離脱症状が現れることがあります。

薬を急にやめた場合にみられる離脱症状は、長期間、毎日、服薬してきた場合ではSSRI以外の抗精神病薬や抗不安薬でも、現れることがあります。離脱症状が現れるかどうか、どのような症状が現れるかは、個人差が大きいのですが、いずれの場合でも、薬を止めるときは、医師と相談しながら、徐々に減薬していくようにします。


 子どもへの薬物療法は何歳くらいから可能なのでしょうか?

SSRIは、幼児(7歳以下)に対しての安全性は、まだ確認されていません。小学生から思春期の児童(8-18歳)については、医師が薬剤によって得られる効果とリスクとを考慮しながら、慎重に投与するものとされています。[2]海外の主要な国では、SSRIを児童に対して使用することが認められています。日本では認知行動療法などが普及していないため、現実的には、SSRIをはじめとする薬物療法以外に治療の選択肢がないという事情があり、慎重に患者さんの状況をみながら投与されています。

児童のOCDへの薬物療法については、第120回OCDコラム「金生先生インタビュー Vol.3」に詳しく書かれていますので、ご参照ください。


 妊娠中や授乳中の女性は薬物療法を受けられないのでしょうか?

SSRIは、妊娠中もしくはその可能性のある女性は、服薬しないことが望ましいとされています。また、母親が薬を服薬中の場合、その母乳にも、比較的少量ですが薬が含まれることが報告されています。そのため、授乳期間中はSSRIの服用を中断するか、授乳を避けることが望ましいとされています。[2]

しかし、妊娠、出産といった人生のイベントを契機に強迫症状を発症することもあり、以前からOCDを抱えていた女性においても、妊娠・出産を機に、症状が悪化することがあります。OCDを抱えたままの子育ては非常に大変です。できれば妊娠する前に、OCDの治療をして、症状が軽減し、服薬を段階的に止めていけるほどに精神症状の安定を確認してから、計画的に妊娠・出産ができると理想的でしょう。


 服薬期間中にお酒を飲んでもかまわないでしょうか?

服薬期間中のアルコールは、避けるほうが望ましいとされています。[2]アルコールによって、薬剤の効果が制限されることがあります。

また、うつ病を併発し、希死念慮などが強い人に対しては、アルコールは危険な状況を招くことがあるので、主治医とご相談ください。


 OCDの新しい薬はできないのでしょうか?

脳内のグルタミン酸が、OCDにも関与しているという報告が国内外であり、それに関連した薬剤の効果と安全性が検証されています。

グルタミン酸は、脳中の神経伝達物質として使われ、さまざまな精神症状に影響を与えます。グルタミン酸が過剰になると記憶に関する神経のはたらきが悪くなることが、知られています。アルツハイマー型認知症の治療薬として使われているメマンチン(商品名:メマリー)という薬は、記憶障害の進行を妨げる作用があります。海外ではメマンチンが、OCDの患者さんにも効果があり、しかも、副作用もなかったという報告があります。[3] 神経伝達物質としてのグルタミン酸は、さまざまな精神作用にはたらきかけるため、グルタミン酸を増やさないことで、結果として強迫症状が和らいだのでしょうが、くわしいメカニズムが明らかにされたわけではありません。

OCDの患者さんのなかにも、確認の強迫行為を過剰に繰り返すうちに、今、鍵をかけたかどうか、記憶があいまいになることがありますが、強迫症状に関係のない場面では記憶に問題はなく、認知症のような記憶障害があるわけではありません。

そのほかにも、グルタミン酸に関連したリルゾール(商品名:リルテック)という筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬や、ケタミン(商品名:ケタラール)という麻酔薬(注射で投与される)がOCDに効果があるかどうかの研究が行われています。しかし、これらはあくまで研究段階のもので、効果と安全性の確認がまだされていませんので、将来、OCDの薬として実用されるかどうかはわからない状況です。


*参考
[1]住谷さつき[著]第6章 薬物療法p63-74、上島国利[編集代表]『エキスパートによる強迫性障害(OCD)治療ブック』星和書店(2010年)
[2]フルボキサミンマレイン酸塩 デプロメール錠 医薬品インタビューフォーム(2013 年4 月改訂)
[3]Ajay Kumar Bakhla, Vijay Verma1, Subhas Soren, Sujit Sarkhel, Suprakash Chaudhury, An open-label trial of memantine in treatment-resistant obsessive-compulsive disorder, Industrial Psychiatry Journal, 2013, Volume 22, Issue 2, p149-152