トップOCDコラム > 第122回
OCDコラム

OCDコラム

強迫性障害(OCD)のお薬Q&A ①
SSRI服薬のポイント

強迫性障害(OCD)の治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)による薬物療法が広く行われています。しかし、患者さんやそのご家族のなかには、もともと薬に対して疑問や抵抗感をいだいている人が少なくありません。また、服薬したが思うような効果が得られなかったという人もいるかもしれません。胃腸薬や風邪薬、頭痛薬のように薬を飲んですぐに効果が現れる薬とOCDなどに用いられる薬は、その特性が大きく異なります。そこをしっかりと理解して治療を行う必要があります。

OCDの薬物治療の主要な薬であるSSRIと脳内の物質セロトニンとの関係や、薬の効果とはどのようなものかなどを知ることで、薬物治療を安心して安全に受けてもらえると思います。今回のコラムでは、OCDの薬物治療を理解してより効果的に受けるためのポイントをQ&A方式で紹介します。


目次
Q1 OCDの薬物療法ではどのような薬が使われますか?
Q2 服薬してから効果が現れるまで、どのくらいの期間がかかりますか?
Q3 SSRIにはいくつか薬剤がありますが、違いはありますか?
Q4 薬の効果が得られるか心配です。どのように考えればいいのでしょうか?
Q5 薬物療法だけで強迫行為の回数が減るのでしょうか?
Q6 副作用が出るのではと想像すると怖いです。どうしたらいいでしょう?
Q7 食事で脳内のセロトニンを増やせないのでしょうか?
Q8 家族はどのように対応したらいいのでしょうか?


 OCDの薬物療法ではどのような薬が使われますか?

OCDの治療薬として、主に使われているのは選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)というタイプの抗うつ薬です。(⇒OCDの治療法>OCDの薬物療法

SSRIは、脳内のセロトニンという神経伝達物質が減らないようにすることで、うつ病の抑うつ気分や、OCDによる強迫衝動を和らげる作用があります。また、SSRIよりやや古い三環系というタイプの抗うつ薬であるクロミプラミン(商品名:アナフラニール)もセロトニンに作用するので、OCDの治療に使われます。

一般的なOCDの薬物療法では、これらが第一選択薬として処方されます。しかし、OCDの症状に対し、SSRIというタイプの薬を単独で使った場合、効果が得られる人はおよそ40~60%といわれていて、効果が現れない人もある程度います。そのため、SSRIのほかに、抗不安薬や抗精神病薬など別のタイプの薬が併せて処方されることもあります。


 服薬してから効果が現れるまで、どのくらいの期間がかかりますか?

OCDの薬物療法では、安全に薬を飲んでもらうために、最初は1日の服薬の合計を少量から始めて、徐々に増やしていくのが一般的です。

薬を飲み始めて1カ月以内に効果が現れる人もいる一方で、なかなか効果が実感できない人もいます。「強迫症状がいくらかでも和らいだと感じられるまでには、早くても6~8週かかり、効果の判定には10~12週かかる」といわれています。[1,2]したがって、薬の効果がなかなか現れなくても、すぐに中断しないで、主治医とともにしばらく経過を見守るといいのです。

SSRIの服薬については、OCDコラム 「第55回 薬(SSRI)を効果的に利用するコツ」にくわしく書いてあるので、参照してください。


 SSRIにはいくつか薬剤がありますが、違いはありますか?

現在、日本で使用されているSSRIは4種類あります。そのうち、OCDの治療薬として健康保険で承認されているものは、フルボキサミン(商品名:デプロメール、ルボックス)とパロキセチン(商品名:パキシル)の2種類です。

SSRIは薬効による分類なので、薬剤によって成分が異なり、服薬する人によって、効果の現れ方も副作用の現れ方も異なります。最初に処方されたSSRI薬で効果が出る人は40~60%という報告があります。したがって、最初のSSRI薬で効果がみられない場合、ほかのSSRI薬に切り替えることで効果が得られることがあります。そして、ほかの薬に切り替えることで、副作用が軽減し薬物療法を続けられることもあります。このような考慮をすることで、薬物療法で効果が得られる可能性が広がります。

ただし、薬を切り替えた場合、また少量から投与を始めて段階的に増やしていくので、その薬の効果が現れるまでしばらく時間を要します。この間、あせると逆効果ですので、辛抱強く様子をみていきましょう。


 薬の効果が得られるか心配です。どのように考えればいいのでしょうか?

Q3でもお話しましたが、OCDの治療で使う薬は効果が現れるまでにある程度の時間がかかります。また、効果が現れてもはじめは強迫行為をしたいという衝動がいくらか和らぐという感じで、強迫観念や強迫行為が完全に消えるわけではありません。以前と比べたら気持ちが楽なような気もするけれど、はっきりとした実感とはいえないという人もいます。

薬の効果は個人差が大きいのですが、海外のデータでは、SSRIで12週間治療した場合、強迫症状は平均で35%軽減されたという報告があります。35%の軽減というと、まだ3分の2程度の症状が残ることになりますが、3分の1でも強迫症状が緩和されると、生活の負担が減って、できることも増えてきます。そんなプラスの面を患者さんが感じることで、その後の治療でもよい方向に作用していきます。[2]

薬の効果が、本当に現れるのか心配になるのは当然のことです。しかし、精神症状に働きかける薬は、そのような疑いや心配に対して理屈でとらわれすぎたり、逆に顕著な効果を期待しすぎたりとすると、薬による変化を感じとりにくくなることがあります。


 薬物療法だけで強迫行為の回数が減るのでしょうか?

OCDの治療に使う薬は、手洗いや確認といった強迫行為を直接減らすというよりも、強迫行為をしたいという衝動をいくらか減らします。強迫行為をしたいという衝動が減ることで、結果として強迫行為も減っていきます。

また、薬による効果は、強迫観念に伴う不快感、強迫行為をしたいという衝動、抑うつ感のように、本人の感情や感覚など感じとる部分が多いので、強迫観念が理屈っぽい人や強迫行為のルールへのこだわりが強い人たちのように、言葉によって判断する傾向が強い場合では、薬の効果を感じにくいことがあるようです。たとえば、戸締りの確認を8回行うというルールにこだわっている人では、強迫行為への衝動が和らいで、1、2回確認をして「今日はあっさりできそうかな」という気分であるにもかかわらず、つい8回というルール通りに確認を繰り返してしまうことがあります。

このような人の場合は、薬物治療に加え認知行動療法を併用すると効果的です。しかし、通院先の医療機関で、認知行動療法を行っていない場合もあるでしょうから、そのようなときは、当サイトの心理教育(OCDの治療法>OCDの心理教育のページを読んで、強迫観念と強迫行為の関係やOCDのしくみをもう一度考えて理解するようにしてください。

薬によって、強迫的な衝動がいくらかでも和らいだら、自分から強迫行為への厳密さをゆるめてみます。今まで完璧に行っていた強迫行為に対して「まっ、いいか」と、途中の段階で思えたらしめたものです。そのように強迫行為を省略できるようになったら、そのときの方法やコツを忘れないように何度も続けて、その感覚に慣れるようにします。そのようにして、今までのOCDの悪循環とは逆の行動習慣を増やしていきます。


 副作用が出るのではと想像すると怖いです。どうしたらいいでしょう?

SSRIの副作用については、第55回OCDコラムの「§3 副作用への対処法」で紹介しているので、参考にしてください。

インターネットを使ってOCDの治療や副作用について調べていると、実にさまざまな情報と出会います。しかし、すべてが正確な情報とは限らないため注意が必要です。患者さんによっては、これらの情報が気になってさらに調べていくうちに、不安が増してしまうことがあります。

OCDの治療でよく使われるSSRIというタイプの薬は世界中で、これまで非常に多くの人が処方され、服用しています。日本でもすでに長く使用されてきた薬です。医師は副作用について十分注意しているはずですから、副作用を含め心配しすぎないでください。ただし、疑問点や何らかの異変を感じたら医師に速やかに相談してください。

薬の治療に限らず、新しいことをする前に不安を感じるのは自然なことです。OCDの人は、とくに未知のことに対して不安を感じるかもしれません。ただし、「不安だ…不安だ」と、先のことを想像しても不安が強くなるばかりで、身体も敏感に感じやすくなることがあります。ですから、不安はそのままにして、将来よりも今日1日に関心を向けてみてください。症状を抱えていても、今できることを大事にしていきましょう。そして、副作用についての不安は、主治医と相談しながら対処していけるといいでしょう。


 食事で脳内のセロトニンを増やせないのでしょうか?

セロトニンの原料となる物質はトリプトファンというアミノ酸とビタミンB6です。アミノ酸はタンパク質を構成する物質で、トリプトファンは豆類(大豆製品、ナッツ)、肉類、魚類、乳製品などタンパク質が豊富な食品に多く含まれています。ほかには米やそば、バナナなどにも含まれています。しかし、トリプトファンなどが含まれている食品をたくさん食べたからといって、脳の神経伝達物質・セロトニンの量は変化しません。

脳は、飢餓といった最悪の事態を想定して、栄養がうまく摂取できないときでも、脳への影響をできるだけなくし安定して働けるような仕組みになっています。つまり、お菓子しか食べなかったり、カフェイン入りの飲料を飲みすぎたりと飲食物が極端に偏らなければ、栄養によって脳の働きが左右されることはほぼありません。同様にSSRIなどの薬も脳内で効果が現れるまでに、時間がかかってしまうのです。

食物から摂取したトリプトファンのほとんどは、腸内でセロトニンとなって腸管の収縮に使われたり血液中を流れたりしますが、これら体内のセロトニンは、脳の中の神経伝達物質には使われません。体内のセロトニンのうち、神経伝達物質としてのセロトニンは100分の1~2程度の微量で、脳の神経細胞のなかで直接、トリプトファンからセロトニンに変化するのです。[2]

実は、食物や薬で神経伝達物質としてのセロトニンを増やすことはできません。セロトニンに作用するSSRIという薬もセロトニンを増やすのではなく、脳内の神経で作られたセロトニンが、一度神経から放出された後、再び神経に取り込まれることを妨害して、セロトニンが減らないように働きかけるのです。

極端にタンパク質やビタミンが不足した食生活でなければ、食事についてはそれほど心配する必要はないと考えられます。


 家族はどのように対応したらいいのでしょうか?

「ちゃんと病院に通院しているのに効果がない」と、治療に対して、家族が不安や不満を募らせことがあります。しかし、そのような状況になると、患者さんへも不安が伝わりプレッシャーとなったり、不安を増長させたりすることがあります。家族の方も心配でしょうが、OCDの治療で使われる薬の特性を理解して、穏やかに対応してください。

強迫症状への巻き込みが激しいケースでは、家族が穏やかに対応することが難しいかもしれませんが、巻き込みについては、家族も心理教育のポイントを知って注意してください。薬による症状の変化と合わせて、患者さんや主治医と相談して、巻き込みなどを減らしていけると理想的です。

次回のコラムでも、強迫性障害(OCD)のお薬Q&Aとして薬への疑問に答えます。


*参考
[1] 吉田卓史、中前貴、正木大貴、福居顯二「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は強迫性障害の治療を変えたか」精神科治療学Vol.22 No.6 Jun.2007
[2]鈴木映二「セロトニンと神経細胞・脳・薬物」星和書店(2000年)