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OCDコラム

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不潔恐怖・汚染/洗浄にまつわる悩み

不潔・汚染に対する強迫観念と洗浄という強迫行為は、強迫性障害(OCD)でよく見られるタイプのものです。そして、これらの症状が重くなると、日常生活に支障をきたし、患者さんは多大な苦痛と疲労を感じるようになります。しかし、OCDの症状について、他人に話してもわかってもらえないと考え、自分一人で悩んでいたり家族のなかだけで悩みを抱え込んでいたりすることも多いようです。
今回のコラムでは、汚染/洗浄タイプのOCDの方が抱える日常の悩みのうち、洗濯やトイレの使用に関わるものから、外出時に起こりやすいハプニングなど、状況に応じた悩みや家族との間でトラブルになりやすい問題について取り上げます。


目次
§1 洗濯はしたいけれど洗濯するのも大変
§2 気になる光熱費・水道代
§3 トイレットペーパーの平均使用量
§4 外出でのハプニングと便利な除菌用品の落とし穴
§5 自分を責めないで


§1 洗濯はしたいけれど洗濯するのも大変

汚染/洗浄の症状をもつ患者さんは、一度でも袖を通したものは、直接肌に触れたものではなくても、洗わないではいられないという話を聞くことがあります。そのため、自宅で洗濯できる素材のジャケットしか着なかったり、バッグも革製ではなく洗濯ができる布製のものを使うという人も少なくありません。そのような方は帰宅後すぐにそれらを洗濯します。また、タオルも使うたびに洗濯するので、一日に何枚ものタオルを洗うようになります。したがって、通常の家庭よりも洗濯物の量が多くなりがちです。

汚染/洗浄タイプのOCDの人は、常に汚れの侵入を防ぎたいと思い洗濯などをするのですが、洗濯しているときも、OCDという病気がスムーズな作業を邪魔することがあります。たとえば、次のようなことが気にかかるため、時間も労力も必要とします。


ほかにも、家庭用の漂白剤やトイレの洗剤の容器に、「混ぜるな!危険」と表示されているものがありますが、このような安全に使用してもらうための表示であっても、そこから危険なものを感じ取り、過剰な警戒をしてしまうことがあります。また、漂白剤のなかには「熱湯で使わない」と使用上の注意が書かれているものがあります。「熱湯」とは、手を触れることもできないほど熱く煮えたぎったものをいうのであって、ぬるま湯は該当しません。それなのに、冬でもお湯を使わず、冷たい水でなければならないと思い込んでいる人もいます。不潔なものに不安を覚えるため、一刻も早く洗浄したいのですが、そんな洗浄の場面であっても大きなストレスを感じてしまうことがあるのです。


§2 気になる光熱費・水道代

汚染/洗浄にかかわる強迫行為によって、光熱費や水道代が高額になることがあります。水道料金が通常家庭の2~3倍以上になることも珍しくありません。その原因としては主に次のことが考えられます。

ちなみに、東京都水道局によると、家庭で使う水量の1カ月あたりの平均は、単身世帯で7.8立方メートル(=7,800リットル)、3人世帯で21.6立方メートル(21,600リットル)でした。[2]

あくまでも参考例ですが、一般家庭での水の使用量(機種・使用法によって異なる)は、次のようになります。[3][4]

総務省の家計調査(平成25年)[1]によると、上下水道の全国平均額は1カ月当たり単身世帯で2,099円、2人以上の世帯で5,154円ということです。しかし、OCDの方がいらっしゃる家庭では、1カ月で数万円になることもあります。

また、入浴やシャワーが頻繁になると給湯器に使われるガスもしくは電気の使用量も増えます。ガス料金の1カ月の平均額は単身世帯で3,313円、2人以上の世帯で5,579円です。光熱費・水道料金全体の平均支払額は、単身世帯で11,863円、2人以上の世帯で23,240円ということです。公共料金は、地域によって計算法が異なりますし季節によっても使用量が異なりますが、皆さんの家庭ではいかがでしょうか。

これらの支払いが高額になり、家族ともめたという話も聞きますが、患者さんにしてみれば、怒られてもそう簡単に使用量を減らすことはできず、強迫症状と家族の苦情との板挟みになりかねません。根本的な対策は、治療によってOCDの症状を改善することです。治療がうまくいっていないのに、水や電気の使い過ぎだけを改めようとしても難しいでしょう。しかし、毎月どのくらいのお金がかかっているかを知ることは大事です。

強迫行為をしているときには、ほどほどで終わらせるという感覚がわかりにくくなっています。患者さんの感覚のままに好きなだけ使ってしまっていると、使用量はますます増え、症状も悪化しがちです。強迫行為が症状を悪化するというOCDの特性を理解した上で、簡単ではないかもしれませんが、いくらかでも節約の工夫ができるといいですね。


§3 トイレットペーパーの平均使用量

トイレや排泄物が気になる人では、トイレットペーパーを過剰に使ってしまうことがあります。1度に1ロールすべて使ってしまって、水が流れなくなってしまったという話も聞きます。

トイレットペーパーに関してですが、2008年に全国2,126人に対して行ったアンケート調査[5]によると、1人が使うトイレットペーパーの量は1カ月に3.3ロールだったそうです。つまり、9~10日で1ロールという計算になります。このような数字を目安にしてみてもよいですね。

トイレットペーパーを大量に使ってしまう人は、どのくらいで止めてよいのか目安がわからなくなっていることが多いのです。たとえば、食事の後、口の周りを紙ナプキンで拭き取るときは、それほど何枚も使わないのではないでしょうか。口の周りにケチャップが付いていたとしても、そんなに大量に紙ナプキンを使うことはないでしょう。それは、「口の周りに食品が付いている」という状況に対して強迫症状を感じていないからです。もちろんトイレットペーパーの使い方と同じというわけではありませんが、恐怖や不安がないときの使い方はどのようなものかを気づく参考にはなるでしょう。


§4 外出でのハプニングと便利な除菌用品の落とし穴

不潔恐怖の人のなかには、除菌スプレーやウェットティッシュを必ず持ち歩く人がいます。汚いと思っているものに触れてしまったとき、それらを使えば汚れをすぐに除去できるため、確かに便利です。また、ドアノブなどに触るときにもこれらは役に立ちます。除菌用品を持ち歩くことで、外出ができるならば、ぜひ一歩外へ踏み出してほしいと思います。自宅に引きこもるよりは、健康のためにも、社会との接点を保つためにも、外出することは大切です。

ただし、OCDという病気では、ほかの人から見れば、どこが汚いのかわからないくらいでも、本人は汚れたと思って洗ったり拭いたりしなくてはいられなくなることがあります。このような場合、気軽に洗浄の強迫行為ができる除菌用品を持ち歩くことが、強迫行為を助長することになり、強迫症状を悪化させることもありますので、注意が必要です。

外の世界では思ってもみなかったことに遭遇します。たとえば、公衆トイレの手洗い場に石けんが置いていなかったり、洗面台に髪の毛が落ちていたりするのを見かけると、自分ばかりそんなハプニングに出合うように思うかもしれませんが、外の世界は元々、そのような場所なのです。OCDになる前は気にならなかったことが、強迫観念のせいで神経質に見てしまうため、それまでよりも気づきやすくなっていると考えられます。

恐怖や不安に対して、受け身でいるとなおさら感受しやすくなります。むしろ、外ではこのようなハプニングがあるのが当たり前であり、自分からハプニングを受け入れるような姿勢でのぞめるといいのです。


§5 自分を責めないで

「こんなに大量の石けんを使ってしまって申し訳ない」「入浴に時間がかかってしまって家族に申し訳ない」と感じている患者さんも少なくありません。それなのに水やトイレットペーパー、除菌用品などを大量に使ってしまうのは、OCDという病気によるためです。つまり、個人の性格とは区別されるべきものですから、どうか患者さんを責めないでください。もちろん、本人も自分を責めるようなことはしないでください。

洗浄行為が重くなると、手の洗いすぎなどで手の皮膚がひび割れて出血することがありますが、患者さんの多くは、そのようにつらい状況であっても手洗いが止められないのです。強迫症状による感情や感覚のままに、洗浄行為を繰り返すことは、OCDの症状を悪化させますし、手荒れや家族との関係など二次的な問題に発展することもあります。

今回のコラムでは、汚染/洗浄のタイプのOCDの人が、陥りやすいことを紹介しました。OCDという病気の術中にはまらずに、少しずつでよいですから、自分でコントロールすることを目指しましょう。そのためにもOCDという病気を見据えて、じっくりと治療をしていけるとよいと思います。




*参考
[1]総務省統計局「家計調査」報告(家計収支編)―平成25年(2013年)平均速報結果―
[2]東京都水道局>よくある質問 平成18年度 生活用水実態調査
[3] 生活知恵袋>水道代節約
[4] TOTOアフターサポート
[5]「もっと!トイレットペーパー!」>トイレットペーパーみんなの意見>「第2回トイレットペーパーに関するアンケート」の結果発表(2008年)