トップOCDコラム > 第12回
OCDコラム

OCDコラム

OCDの会 第1回市民フォーラムレポート(3)
OCDという病気への理解が家族の悩みを軽減する


昨年の10月23日に熊本市で開かれた「OCDの会 第1回市民フォーラム」の報告を、3回にわたって掲載しています。
最終回は、家族のつらさについて取り上げます。

●ガラリと態度が変わる夫に、何がいけないのだろうと悩んで。

「私がお話しすることで、皆さんが、つらい思いをしているのは自分だけじゃないと感じてくれればいいなと思います」
そう前置きをしてお話を始めたのは、OCDの会会員の一人、Uさんでした。Uさんは、夫がOCDになるという体験をしました。

「夫は普通の人よりも神経質だな、と思っていました。夫は子育てが終わった頃にうつ病になり、通院をしました。その病院でOCDだとわかりました。夫も私も、そのときまでOCDという病気があることを知りませんでした。

それまでのつらかったことを思うと、今でも涙が出ます。夫と結婚して以来37年間、これが病気のせいだということを知りませんでした。手の平を返したように態度が変わる夫に、私の何が気に入らなかったのだろうと悩んだこともあります。強迫行為が出るときは、私に暴言を吐くのです。『お前がここに物を置いておいたからいけないんだ』と。とても普通の生活ができるような状態ではありませんでした」

一番つらかったのは、本人が『死にたい』と言うことでした。この人を殺して私も死のうかと思ったことさえありました。つらかったです。何回も何回も、どうしてこの人は私に聞いてくるの。私にたずねてこないで……。夫は私の後をついて回って聞いてきます。それがいやでいやで、毎日泣きました。患者もつらいと思いますが、家族もつらいんです」

●「やめたければやめればいいじゃない」と言っていた。

OCDの症状のひとつに、確認強迫 ⇒(OCDの症状)があります。患者のいちばん身近にいる家族は、この確認強迫に巻き込まれ、繰り返し確認を求められることがあります。

「やめたければやめればいいじゃない、と私も言っていました。そんなの、やめれば簡単よ。なんでやめないの、すぐやめられるじゃないの、と。それで夫にずいぶん苦しい思いをさせてしまいました。でも、そんな問題ではありませんでした。本人は自分でわかっていてもやめられないのですから」

Uさんは、最初の病院の紹介で、OCDの治療に実績のある病院(国立病院機構 菊池病院)を紹介してもらい、そこで病気についての説明を受けました。
「OCDという病気はどんな病気か勉強させていただいて、なるほど、この人はこういう病気なんだとわかりました。

先生に『治ります』と言われて、ほっとしました。治る病気ならば治していこう。夫と一緒に治そう、と。病院に行くときは必ず自分もついていって、先生の話を一緒に聞くようにしました」
OCDの治療では、家族の役割も大切です。⇒(OCDコラム:病院に行きたがらないOCD患者に対して家族はどう接すればいい?)家族が強迫行為に手を貸しすぎると、治療に影響が出る場合もあるからです。

「いかにつきあっていくかということも、だんだんわかってきました。本人の言うことを何でも聞いてあげるのがいいわけではない。つかず離れず、放り出すのではなくて、ここはついてあげて、ここはついてあげないでと、考えながらやっていけばいいのだと。私も時々は本人を置いて出かけられるようになり、前よりも自由になりました」

●今は夫との仲もよくなって。

OCDがどういう病気かを理解するにつれて、夫の態度も変わってきました。
「夫も自分で治さないといけないとわかってきて、私に対して確認する回数が減ってきました。今は冗談も出るようになり、調子のいいときは『ごめんね』と言ってくれます。先生に相談しながら、二人で治していこうと一生懸命です」

Uさんは、ご近所や友達にも、夫がOCDで通院していることを隠していません。
「うちはこういう病気で生活しています、と言っています。今日は調子が悪くてね、と。病気であることを隠さないで、治療しようという気持ちが大事だと思います」

夫婦の関係も変わってきました。
「もうすぐ子どもも自立して、二人だけになります。二人で暮らすなら、くさっても一日、楽しんでも一日。明るく、前向きな気持ちでやっていけば何とかなる。皆さんもくさらないで、治療を受けてみてください。一人でも多くの人に治ってほしいのです」

OCDの会には、患者だけでなく家族も参加しています。会員の一人は、こう言います。
「患者さん自身も勇気を出して一歩前に進んで、家族も病気を少しずつ受け止めて一歩前に進んで、お互いが歩み寄って病気に向かっていくことが必要ではないかと思います」

●病気についての知識を持とう。

かつて、OCDは本人の性格や気質が原因であるとされていた時代もありました。本人の生育歴に原因を求める立場もありました。そうなると、家族のなかでもとくに親はつらい思いをします。前回のコラムで紹介した事例でも、親御さんは、子どもがOCDになったのは自分の育て方に原因があるのではないかと悩んでいました。⇒(OCDコラム:OCDと診断されるまで)

この日の講演で、原井宏明先生はこう言っています。
「子どもが病気になると、親は自分の育て方のせいではないか、と思いがちです。親戚などのまわりの人も、親を責めることが多いでしょう。心身の具合が悪くなったときに、その原因は何か? 犯人は誰か? と考えるのは人の本能のようなものですし、子どもの場合はすぐそばにいる親が簡単に容疑者になってしまいます。しかし、親が自分のせいだ、自分が悪いと考え始めると、一人で荷物を背負い込むことになるだけで、問題の解決からは遠のきます。

 病気になったことについて家族が責任をもつ必要はありません。しかし、症状を減らして本人や家族が楽に過ごせるようにする方法はあります。対処方法を調べて、実際に行い、また本人が行えるようにするよう努力する責任はあります。これは一人では行えません。OCDの会の中で、家族同士のつながりが生まれ、家族が強くなることを期待しています」

OCDの会ホームページ
http://ocd-2004.hp.infoseek.co.jp/