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金生先生インタビュー(全3回) 子どものOCDとは? Vol.1
チック、発達障害と子どもの精神症状の特徴

東京大学医学部附属病院
こころの発達診療部
金生 由紀子先生

「小さなことが気になるあなたへ」では、これまで小児や思春期の強迫性障害(OCD)について、あまり取り上げてきませんでした。しかし、10代でOCDを発症する子どもが少なくないことから、今回は、子どものOCDやチックといった精神症状にくわしい東京大学医学部附属病院・こころの発達診療部の金生由紀子先生に、インタビューをさせていただき、今月から3回に分けてご紹介します。第1回目は、子どもの心の問題の特性についておうかがいします。


目次
§1 子どものOCDとチックの特徴
§2 年齢による症状の変化
§3 発達障害と性格への考え方


§1 子どものOCDとチックの特徴

●今回のインタビューでは児童期や思春期のOCDについて、お話を聞かせてもらいたいと思います。先生が担当している患者さんは児童が中心とお聞きしておりますが、児童のOCDにはどのような傾向がありますか。

金生:基本的に私が診ている患者さんは子どもさんです。「チック強迫外来」という名前の専門外来をしていまして、チック*1か強迫症状を主訴としていて、年齢も18歳までとしているんですが、実際には、18歳までに発症して大人になっても症状に悩まされているという場合には来ていただくこともあります。再来では18歳以降も通い続けている方もいます。

チック強迫外来ですので、チックをもっている、あるいはチックではないけれど、ちょっとクセをもっているお子さんが多くいらっしゃいます。抜毛(ばつもう*2や、吃音(きつおん*3などです。世のなかのOCDのお子さんの全体をみると、いわゆる従来の神経症*4というような人も少なくないのかもしれないけれど、私のところだと、チックや発達障害*5寄りの方が多いと思います。

教科書的にみても、子どものOCDでは、チックやAD/HD(注意欠陥・多動性障害)*6の併発が多いとか、男の子に多いとかいわれているように、大人のOCDと比べると違うところがあります。そういう意味では、当外来は子どものOCDの患者さんのかなりの部分をカバーできているのではないかと思います。チックがあるとか、発達的なアンバランスがあるとか、男の子に多いとか、教科書的な特徴に合致します。

強迫症状の種類では、「ピタッとしないと気が済まない」とか、対称性に関する症状などが強い人が結構いらっしゃいます。不潔恐怖で手洗いをする人もいないわけではないんですが、むしろそれ以外の症状の人が多いです。

これも教科書的にいわれていることですが、年齢が低ければ強迫行為が目立ちます。強迫行為に対して「どうしてだかわかんないんだけど、しなきゃいけないんだ」という子どもさんもいますし、また、本人はなぜだかわからないけれど、恥ずかしいというか、変だと思っていて、あんまり強迫行為を人前で出そうとしないため、家族が気づかなかったということもあります。むしろ、チックがあるとか、不安が強いとか、うつっぽいとかで受診して、いろいろ聞いてみると、OCDであったということがあります。最初はちょっとOCDとはわからないこともあります。

大人だとたぶん「強迫症状が苦しくって」と病院に来るんですけど、子どもの場合、強迫症状かどうかも当初よくわからず、いろいろ検討して、OCDと考えるしかないんじゃないかと落ち着いていくケースがあります。たとえば、ご飯が食べられないというのも、「飲みこむのが苦しい」と漠然と感じる恐怖症なのか、より明確な強迫症状をもつOCDなのかが問題になることがあると思うんですが、子どもの場合、未分化なところもあります。たとえば、儀式的な食べ方とかをするようになって、食事に関して不安が高まっているためにそれを回避しようとして、結局食べられなくなっちゃったんだと考えざるを得なくなり、OCDと考えるということがあります。それから、私がチックの研究をしているので、ご家族が「チックです」と連れてくることも多く、その場合、典型的なチックもあるけれど、チックとともに強迫行為もみられることもあります。本人も苦しくないわけではないのですが、しっかり訴えるとは限らないというのが、大人の方との違いです。

●親は、どのようなところでチックやOCDに気づくのでしょうか。

金生:チックもそうなんですけど、OCDでしたら、階段を上ったり下りたりするとか、ドアを何度も押したりとか、おかしな動作を繰り返ししていることで、一番気がつくかと思います。データをとったわけではないんですけど。面談していると「変な動作を繰り返ししている。おかしくなったんじゃないか」と親御さんが話します。動きという点ではチックにもつながって、反復する儀式的な動作が多いと思いますね。


§2 年齢による症状の変化

発達*7の時期という観点から、小学生、中学生、10代後半では何か違いがありますか。

子どものOCDは比較的強迫観念を感じないといわれるが、年齢が高くなるにしたがって、観念で悩む子が増えてくるという


金生:そうですね。10歳くらい、小学校の5、6年生が、発達の大きな節目だと思います。この年齢になると、周りの人の目も意識しだすし、自分のことも振り返って考えたりするようになります。強迫観念がしっかり出てきて、本人も苦しいと感じるようになります。年齢が高くなるとより強くなってくると思うんです。それよりもっと年齢の低い子では、本当はどこかで苦しいんでしょうけど、あまり本人がわかっていない場合もあります。

もっと年齢が低い幼児期ですと、私も数例しか経験していないのですが、不安といっていいのか恐怖といっていいのかわからず、爆発みたいな感じになっちゃう子がいます。幼児期と小学校の中学年くらいまでと、小学校の高学年以上では違ってきて、中学生の後半くらいになると大人と、かなりつながっていくところがあると思います。

発達障害をベースにもっていてOCDになったという場合、必ずしもみんな繰り返しの動作をするとか、ピッタリじゃないと気がすまないというばかりでもなくて、不潔恐怖的な手洗い強迫になる人もいます。それは発達障害がベースだからとか、何歳だからとかきれいには分かれないですが、精神発達上からしても幼児期と小学校入学から10歳くらいまでと、そこから上とで、ちょっとニュアンスが違ってくると思います。やっぱり、本人の自覚の違いが一番大きい。年齢が上がれば上がるほど、自覚が出てきて、それだけ観念で悩むことがはっきりしてくると思います。

●自覚って強迫症状への違和感みたいなものでしょうか。小さい子どもでは言葉で表せないこともありますか。

金生:そうです。『DSM-IV-TR』*8では、OCDの診断基準として、「子どもでは違和感がなくてもいい」ということでしたし、『DSM-5』*8では、年齢にかかわらず「違和感がなくてもいい」ということになりました。しかし、実際に困っていれば子どもでも違和感をもっている訳です。違和感という言葉では表せなくても「なんかいやだなあ」と思っているんです。われわれがわかるような違和感というものは、年齢が上がって、10歳以降になってからはっきりする人が多くなってくるようです。

小さい子では、「なんだか怖かったり」「嫌だったり」としか表せないことがあります。そういう本人なりの嫌な気持ちというのを、強迫症状の説明にはつながらなくても聞いてあげるということと、本人の表情とか行動を観察すること、そして、家族からもよく話をお聞きするということを組み合わせて判断せざるを得ないですね。


§3 発達障害と性格への考え方

●金生先生から見て、発達障害の傾向がある人は増えている印象はありますか。

金生:病院に来る人はすごく増えていると思います。それが世のなか全体で増えているのか、病院に来やすくなったのかは決め難いところがありますが。それと、もうひとつ、診断する側の姿勢の変化が挙げられます。以前の診断基準*10でしたら、自閉症*9とかアスペルガー症候群という診断カテゴリーの枠が明確にあったのですが、それに対して、自閉症を中心として連続したものとして自閉症スペクトラム障害*10があって、その外側に、障害ではないけどその傾向がある人がいると考えられるようになりました。スペクトラムとしてとらえると、そういう傾向をもつ人はいっぱいいて、そういう人たちの苦手なところとか、反対によいところをわかったほうが、対応しやすいのであれば、発達障害、発達特性*7と広げて考えようとなった面もあると思います。

それから、生物学的な変化によって発達障害が増えてきたこともあるかもしれない。たとえば、環境汚染物質などによって胎内で脳の発達に障害を起こしやすくなったというのもあるのかもしれません。とはいえ、データがあるわけではないですが、生物学的な変化よりも社会の変化の方が、発達障害を起こしやすくしたり、発達障害を明らかにしやすくしたりしていることが多いような気がします。昔だとコツコツやるお仕事がいくつもあって、それをコツコツやっていけば認められて、別に難しいコミュニケーションをしなくてもよかったところがあります。一方、いまは、仕事が画一化されている部分があって、割と大きなシステムのなかで動かないといけないことが多く、さらにコミュニケーションが求められます。そうすると、遺伝子とか脳のはたらきは昔も今も同じでも、昔の社会だったら、「律儀なお百姓さん」とか「立派な職人さん」として、周囲から尊敬されていた人が、いまは、会社のなかで上手にコミュニケーションが取れなくて、「困った人」となることがあります。同じ人であっても、時代によって症状の切り出し方というのでしょうか、評価が変わってきた部分があると思います。

しかも、以前は、小さいときからどのような大人になるかという社会の方向が決まっていて、それに向けてしつけというものがわりときちっとされてきて、それがよいか悪いかはともかく、価値観としてのパターンをちゃんと学んで、そのパターン通りに行動すればよかった。以前は、一定の発達のアンバランスはあっても、きちっと行動できるようにしつけによって教わることができましたが、今はそんなにしつけとかしないですよね。そうすると、本人なりの調節が学びにくくなっているようにも思われます。もしかしたら、生活リズムの乱れなんかも脳の発達に多少影響しているのかもしれません。

知的な面を含めて発達障害の程度が重度な人は昔も今も変わらないと思うんですけど、軽度な人がより発達障害の問題を起こしやすいような社会の在り方になって、しかもそれが問題として認識されやすいような社会になっている。社会の目というんですかね、そういうのがあって、たぶん病院へ来る人は増えていると思います。しかも、医師のほうも診断しやすくなっているので、患者さんの数は増えているのではないでしょうか。

●典型的な自閉症の人、自閉症スペクトラム障害の人、その傾向がある人、それぞれある意味では個性なわけですよね。誰だって、長所と短所があって、短所をすべて改めないといけないわけではないし、なんとか社会で適応できればいいと思うのですが、実際の社会ですと難しい面とかありますか。

金生:そういうのはあると思いますね。ひとつは価値観ですよね。「コミュニケーションはちゃんとするべき」とか「空気は読むべき」とか、そういうものが社会全体でもそうだし、家庭とか学校で、どれだけあるかということも、影響があると思うんです。

もうひとつには、性格もあると思います。すごく素人っぽい言い方をすると、発達特性とか発達障害とは別に、不安が強くてピリピリしているお子さんもいれば、症状は確かにあるんだけど、割とのほほんとしているお子さんもいます。それは生まれつきの部分もあるし、愛着関係*11みたいなものができていたかによる部分もあると思います。でも、それを分けることは本当に難しくて、お父さんやお母さんがその子を大事に思って一所懸命育てているつもりでも、両親の不安が強いと不安の強い子に育ってしまう。なかなか安定した愛着が形成しにくいのです。お父さんお母さんが「まあ、なんとかなるや」という感じだと、本人もまたそういう性格になる。

性格というのは、遺伝的な素因もあるので、親の育て方のせいだけでは決してないと思います。同時に、小さいときに安心感を得て愛着関係がちゃんとできてきたかというのが、発達障害があろうがなかろうが、強迫の症状をもっていようがなかろうが、すごく大事だと思います。そういうことができている方のほうが、いろんな治療を進めやすいというのがあるんです。

発達障害やOCDがありながらも生きていくといったときに、自分に対する基本的な安心感みたいなものをもっていると、よいと思います。ただ、それはやろうとしてできるものとは限らないと思います。たまたまそういうふうにもっているということだという気がします。明らかな虐待とかすごくネガティブなものをなくしましょう、ということはできるにしても、同じ育て方をしても人それぞれの性格だからしかたがないこともあるので、性格なりにやっていくんだということだと思います。


次回は、「発達段階に応じた親の対応、学校、いじめとの関わり」として、子どもの心の問題に、家族や周囲の人がどうかかわっていけばいいのかをお伝えします。


*注釈
*1 チック――自分では意図しないのに、ピクピクッとかパチパチッと体の一部が動いてしまうもの。顔の一部、首や手、足などが勝手に動いてしまうものや、音声チックといって、勝手に声を上げてしまうものもある。物や人を触ったり、たたいたりする複雑運動チックは、外見では強迫症状との違いがわかりにくいことがある。[2]
*2 抜毛癖(ばつもうへき)――自分の毛髪・体毛を抜くことを繰り返す精神疾患。手がひんぱんに毛へと伸びて抜きたがり、健康な毛を何本も無理やり抜くので、抜いた痕が目立つほどになる。
*3 吃音(きつおん)症――発語の際に、音が続いたり、中断したりして、スムーズに発声できないこと。学業、仕事、対人コミュニケーションで支障をきたすこともある。発症の原因はよくわかっていない面もあるが、不安、緊張、ストレスの影響を受ける。
*4 神経症――社交不安障害(対人恐怖)、パニック障害、強迫性障害、PTSDなどのトラウマやストレスによる障害などが神経症と呼ばれていた。主に心理的な要因によって生じる精神疾患について、統合失調症などの精神病とは区別して使われてきた。現在の診断基準では、強迫神経症のような病名では神経症という名前は使われなくなったが、分類としては用いられることがある。
*5 発達障害――脳機能の何らかの発達の偏りにより現れてくる障害。自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)、知的障害(精神遅滞)などが含まれる。(⇒第82回コラム参照
*6 AD/HD――注意欠陥(AD)は、本人が努力していても不注意が頻繁に生じて問題となる症状で、多動性(HD)は、じっとしていたり、じっくり物事を行うことが困難で、動作が頻繁に繰り返されたり、変化する。
*7 発達、発達特性――発達とは、体の成長とともに、その機能が環境にうまく適応していくこと。年齢とともに体が成長していく面と、出生後の養育や学習によって獲得されていく面とがある。発達特性とは、発達の段階の途上、現れたり形成されていく特性のこと。
*8 『DSM-IV-TR』『DSM-5』――DSMは、アメリカ精神医学会(APA)が作成した精神疾患の診断基準。改定の時期によって、DSM-Ⅳ-TR は2000年に改訂されたもので、DSM-5版は2013年に改訂されたものを指す。(⇒第115回コラム参照
*9 自閉症――3歳以前に始まる脳の機能の遅れまたは偏りによって、特定のことへの興味の限定、感覚の認識の偏り、物事へのこだわり、独特もしくは反復的な行動や言語の様式、他者とのコミュニケーションや集団への参加することが困難などの特性による障害をもつ。知能(IQ)的な障害を伴うものと、知能的には問題のない高機能のものとがある。自閉といっても、自宅にひきこもるという意味ではない。
*10 自閉症スペクトラム障害――自閉症を含め、それに似た特性をもつアスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害などを含めた発達障害の分類名の一つ。DSM-5から診断基準に用いられるようになった。スペクトラムとは、障害・疾患の特性がどこからが正常かという境界が明確ではなく、共通した連続性をもつという意味で、このグループの症状は、人によって内容・程度はさまざまな面もあるが、共通したつながりが見られる。DSM-Ⅲ‐Rまではアスペルガー障害は診断基準に掲載されてなく、自閉症か特定不能の広汎性発達障害のいずれかであった。DSM-Ⅲから広汎性発達障害、DSM-IVからアスペルガー障害が診断基準に掲載された。
*11 愛着関係――愛着とは、心理学では、幼児期までの子どもが、育児する側(主に母親)との間でつくられる情緒的な関係をいう。育児者が愛情をもって接して育てることで、子どもも生理的な欲求を満たし、精神的な安心感を得て成長することができる。標準的には、生後2-3年までに確かなものとなる。


*参考文献
[1]アメリカ精神医学会[編]高橋三郎、大野裕、染矢俊幸[訳]「DSM-Ⅳ-TR精神障害の診断と統計の手引き 新訂版」医学書院(2003年)
[2] 齊藤 万比古、金生由紀子[編]「子どもの強迫性障害 診断・治療ガイドライン」星和書店 (2012年)
[3]小林芳郎[編著]「心の発達と教育の心理学」保育出版社(2001年)