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OCDコラム

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OCDの子をもった母として、悩みと願い

家族が強迫性障害(OCD)になると、ほかの家族の心にはさまざまな思いが生じます。患者さんの苦痛をみるにつけ、「何とかしてあげたい」と思うことは無理もありません。しかし、そんな愛情が、知らぬ間に強迫症状への巻き込みにつながり、困難な状況に発展することもあります。また、病院に通うようになったものの、症状の改善がみられないと家族も不安になるかもしれません。今回は、OCDのお子さんをおもちのお母様に協力していただき、どのようなことに悩み、どのようなことが問題となっているのかをお聞きしました。


目次
§1 OCDがもたらした悩み
§2 治療状況と現状
§3 家族の抱える不安と希望


§1 OCDがもたらした悩み

OCDのお子さんをもつ4名のお母様に協力していただき、OCDの患者さんと家族との関係を考えていきたいと思います。まずは、お子さんがどのようなOCD症状を抱えていて、家族はどのようなことに悩んでいるのかを聞きました。


4人の患者さんは、いずれも10代で発症し不潔恐怖を体験しています。また、家族への巻き込みも全員にみられました。今回のお母様方への質問では、あえて詳細な個別の状況はうかがっていませんが、強迫症状が重いときは、巻き込みも激しかったことと思われます。

一般に、家族を強迫症状に巻き込むことで、本人は一時的な安心を得ることができます。しかし、その安心は長く続かず、家族など周囲の人を巻き込めば巻き込むほど本人の強迫症状は悪化します。このような状況下で、家族はどう対処すればいいのか悩むことも多いようです。しかし、OCDといっても、状況は各々異なり、うつ病を併発している場合や自傷行為が心配な場合もあり、ときには、家族への暴力に発展しているケースもありますので、一概にアドバイスできるものではありません。

したがって、巻き込みへの対処法としては、本人の状態に合わせて、専門家とともに強迫行為への手助けなどを徐々に減らしていけると理想的なのですが、そのような専門家が地域によっては見つかりにくいこともあり、困っている人もいます。周囲に相談できる専門家がいない方は、当サイトの「OCDの治療法」もしくは第86回コラム「家族が出来る支援・してはいけない手助け」を参考にしていただければと思います。


§2 治療状況と現状

OCDと思われる症状に気づいた後受診したのか、そして、どのような治療を受けたのかをお聞きしました。

4人とも病院を受診し、何らかの治療を受けていることがわかりました。

OCDの患者会のひとつである「OCDお話会」が、同会に参加した121家族に患者さんの受診歴を聞いたところ、約8割が少なくとも一度は受診したことがあるという調査結果が得られました。この121家族は、患者本人が会に参加していない家族です。本人が参加しない場合では、それだけ強迫症状が重かったり、医療や相談機関へ抵抗感を抱いていることも考えられますが、それでも8割の人が受診しているということから、未受診の人はそれほど多くはないのだろうと推察されます。

別の機会に、OCDお話会に参加した患者本人に行った調査では、下表のように、ほとんどの人が複数の医療機関を受診した経験があるということがわかりました。


医療機関におけるOCD治療の中心は薬物療法となります。薬を飲むことで効果がみられる人とそうでない人がいます。薬物療法だけでは効果がみえにくい場合、認知行動療法などを治療に加えたいと考える人がいますが、現状ではOCDに対する認知行動療法を行っている医療機関は少なく、そのため、遠くの地域まで医療機関を探すことになることもあります。その結果、転院する患者さんがいらっしゃるのもやむを得ないことなのかもしれません。

精神科の病院やクリニックのなかにはデイケアを行っているところがあり、それを利用しているOCDの患者さんもいます。一般的には、デイケアを利用している人は、統合失調症やうつ病などの患者さんが多く、OCDの利用者は少ないため、OCDに対して専門的な治療を行うことは、まずありません。しかし、デイケアに通うことで、外出の機会が生まれ生活のリズムを整えるきっかけとなりますし、文化活動やスポーツなどのプログラムに参加することで、病気以外のことへ目が向くこともあります。


§3 家族の抱える不安と願い

現在、お母様たちが抱えている思いや、このような施設・サービスが欲しいなど、実際の体験を通して得られたお考えを聞きました。


今回ご協力いただいた皆さんの置かれた状況はさまざまです。本人が抱える症状の段階や治療の状況によっても、家族の思いは異なることでしょう。強迫症状によるつらさを抱え、出口が見えない状況だと、本人を大切に思うからこそ家族も不安になります。

当サイトでは、そのような方へ多岐にわたるOCD情報をお届けすることによって、不安が少しでも和らげばと考え、活動しています。同時に、どこにお住まいの人にとっても、OCDにくわしい専門家にアクセスしやすく、ときには専門家による訪問もできるような医療のしくみが構築されることを願っています。そして、適切な治療にたどりつく人がもっと増えますように。



書籍:
[1] 津野 恵/著『僕は四つの精神障害 強迫性障害、性同一性障害、うつ病、発達障害と共に生きて』 星和書店2013年