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OCDの本棚――(4) OCDについて知る

当サイトの2009年のコラムでは「OCDの本棚」と題して、強迫性障害(OCD)に関する書籍を3回にわたって紹介しました(第60回コラム第61回コラム第62回コラム)。それから4年が経ち、OCDについて、わかりやすく書かれた新刊がいくつも出版されました。今回は、一般の方向けに書かれたOCDの書籍を目的別に紹介します。OCDという病気について知りたい方、OCDを抱えどのように生活していこうかと考えている方の参考になればと思います。


目次
§1 目的1 OCDの基本情報を知る
§2 目的2 ほかの人のOCD体験を知る
§3 目的3 強迫的溜め込みについて知る


§1 目的1 OCDの基本情報を知る

①『こころのクスリBOOKS よくわかる強迫性障害』
上島国利/監修 有園正俊/著 主婦の友社 2010年 1,400円(税抜)

OCDとはどのような病気なのか、なぜ発病するのか、どのような治療法があるのかといった基本情報から、子どものOCDや家族の対応、病気とのつきあい方などOCDを抱えた人の生活に関する情報まで、わかりやすく具体的に解説しています。

ほかのOCDの患者さんはどんなことで困っているのか、家族はどんなことに悩んでいるのか、これらは、多くの患者さんやご家族が日ごろから感じていることなのではないでしょうか。そのような疑問への答えが紹介されています。そして、OCDという病気を抱えながら生活するにあたって、困ったときにどこへ相談すればよいのかなど相談先や支援制度にも触れています。

著者は、精神保健福祉士として、日ごろからOCDの患者さんに接していますが、イラストレーターの仕事をしていた20代後半から30代にかけてOCDを体験しています。本書には、著者を含め、患者さんや家族11人の体験が掲載されています。また、著者自身によって描かれた本文イラストからは、この病気を体験したからこその気持ちが伝わってきます。監修は、当サイトの監修もしていただいている上島国利先生(国際医療福祉大学教授)です。


②『図解決定版 強迫性障害を乗りこえる! 最新治療と正しい知識』
上島国利/著 日東書院本社2011年 1,300円(税抜)

当サイトの監修をしていただいている上島国利先生による、一般の方向けのOCDの本です。不潔、確認、溜め込みなどOCDの症状につての解説から、その治療法である薬物療法や認知行動療法についてまで、イラストを使いわかりやすく教えてくれます。


③『図解 やさしくわかる強迫性障害』
原井 宏明・岡嶋 美代/著 ナツメ社 2012年 1,500円(税抜)

イラストやマンガを多用して、OCDについて大変わかりやすく書かれた本です。本書の特徴は、OCDの治療として行動療法の技法のひとつであるERP(エクスポージャーと儀式妨害)が紹介されている点でしょう。行動療法のセルフケアとして「自宅でできる6日間の行動療法プログラム」も掲載されています。著者は、日本におけるOCDの認知行動療法の第一人者であるなごやメンタルクリニックの原井宏明先生と岡嶋美代先生で、お二人の長年の治療経験が反映されたプログラムが紹介されています。また、症状を解説したページやQ&Aで取り上げる症例がとてもリアルで、OCDの患者さんが読むと、「私もそう!」と共感するような内容だと思います。


④『こころライブラリーイラスト版 強迫性障害に悩む人の気持ちがわかる本』
原井 宏明/監修 講談社 2013年 1,300円(税抜)

OCDとはどのような病気か、この病気を抱えた人はどのようなことに思い悩んでいるのかが、イラストとわかりやすい文章で紹介されています。章を読み進むにつれ、この病気がどのような経過をたどるのかがわかる構成です。家族が「家族の巻き込み」についても書かれているページを読むことで、OCDの人の気持ちを知る手掛かりにもなります。実際の患者さんの治療のまつわる体験談が載っています。


⑤『だいじょうぶ 自分でできるこだわり頭[強迫性障害]のほぐし方ワークブック』
ドーン ヒューブナー/著、ボニー マシューズ/絵、上田勢子/訳 明石書店 2009年 1,500円(税抜)

本書は、6~12歳の子どもを対象にした絵本で、心の問題とセルフヘルプとしての対処法をテーマにしたものです。病気をいろいろなものにたとえて、絵にして、強迫性障害の特徴や困ったときにはどうしたらよいのかをわかりやすく教えてくれます。

原著はアメリカ心理学会(APA)から出版されており、著者のドーン・ヒューブナー氏は、アメリカの臨床心理学博士で、心の病気をもつ子どもとその親の治療を専門としてきました。本書は臨床心理学に基づいた内容で、紹介されている対処法も認知行動療法を用いたものですが、専門用語を使わずに理解できるよう工夫されています。


§2 目的2 ほかの人のOCD体験を知る

⑥『強迫 くもりのち晴れときどき雨』
梨本恵里子/著 長崎出版 2010年 1,700円(税抜)

フリーランスのライターであった著者は、ある事件に遭遇したことがきっかけで、精神症状が出るようになり、OCDと診断されました。そこで、自分の体験を含め、8名の患者さんや家族の強迫症状体験、そして、1名の方の摂食障害の体験を中心に本書はまとめられています。ここで登場している体験者の皆さんは、それぞれ置かれた状況、症状の内容や併存疾患、発症の時期などが異なります。いくつもの医療機関を受診したり、さまざまな民間団体に参加したりと、皆さん、試行錯誤を重ねながら改善への道を模索しています。

強迫症状が治ったという人の体験も掲載されていますが、その道のりもたやすいものではなかったことが伝わってきます。患者体験談のほかには、4人の専門家へのインタビューとサポート団体「子どもの強迫(OCD)友の会」への参加体験が掲載されています。

著者は、取材を重ねるうちに、病気の受け止め方、「治る」ということの考え方が変わっていったといいます。当事者の気持ちがよくわかる1冊です。

子どもの強迫(OCD)友の会は、現在「強迫友の会OBRI」という名称で、子どもだけではなく大人まで対象を広げ活動をしています。


⑦『僕は四つの精神障害 強迫性障害、性同一性障害、うつ病、発達障害と共に生きて』
津野 恵/著 星和書店2013年 1,200円(税抜)

幼少時から発達障害と性同一性障害を抱えていた著者は、16歳のときに強迫症状を発症し、その後29歳でうつ症状を発症しました。30代になり、これまでの障害や疾患と格闘してきた体験をまとめました。一節ごとに「母のひとりごと」という母親の率直なコメントが添えられていて、病気に苦しむ子どもを見守る親の気持ちも伝わってきます。

著者が子どもの頃は、高機能(知的に問題がない)の発達障害はあまり知られておらず、母子ともに戸惑い、苦悩を重ねたことは容易に理解できます。著者は強迫症状に、家族を過剰に巻き込んでいたので、どんどん重症化していきました。発症後時間が経ったのち、25歳のときに内科を受診し、その後、29歳で精神科を受診します。著者は病気を受け入れ、もう一度、通信制の大学で学ぶことで徐々に社会復帰を果たしていきます。

OCDやうつ病は発達障害や性同一性障害のような障害を抱えた人が、二次的に発症することがあります。いずれの疾患・障害も他人から見ると理解が難しいのですが、本書は著しい困難を抱えた人とその家族が、どうやってそれらと向き合っていったのかがわかる内容になっています。


§3 強迫的溜め込みについて知る

⑧『捨てられない・片づけられない病 ホーダー』
ランディ・O・フロスト、ゲイル・スティケティー/著、ナショナル ジオグラフィック/編集、春日井晶子/訳 日経ナショナルジオグラフィック社2012年 1,900円(税抜)

ホーディング(hoarding)は溜めこみ、ホーダー(hoarder)とは溜めこむ人という意味です。日本で「ゴミ屋敷」と呼ばれるような家の中や外にたくさんの物であふれた状態も、溜めこみと呼ばれ、近年、欧米で研究されるようになってきました。本書は一般向けで、そのような溜めこみの事例がいくつも紹介され、「溜めこみ」にはさまざまなケースがあることがわかります。本書では、これまでの研究による見解や情報が随所に紹介されています。

著者は、OCDや溜めこみ研究の第一人者です。これまで溜めこみは、OCDのサブタイプ(症状の現れ方のタイプ)の一つと考えられていましたが、その後行われたホーダーについての調査では、OCD症状を抱えた人は4分の1弱でしかなく、OCDではない人が多いことがわかりました。また、最新の研究によると人口の2~5%が溜めこみの問題を抱えているということです。

本書は溜めこみの人に向けて、症状の改善方法を紹介したものではありませんが、アメリカの自助グループ、支援先が紹介されていて、社会としてこの問題に取り組むにはどうしたらよいのか、ヒントを与えてくれます。