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OCDコラム

OCDコラム

これって強迫性障害? それとも、ただの心配性?
②確認

戸締りがちゃんとできているか、忘れ物をしていないか、気になって確認をしたという経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。そのような確認と強迫性障害(OCD)での確認とでは、どのような違いがあるのでしょうか。今回のコラムでは、強迫行為としての確認はどのようなものか、その特性をくわしく解説します。なお、OCDの判断は、医師が診断基準に基づき、総合的に判断するものです。今回のコラムで、いくつか例を紹介しますが、これに当てはまるからといって、OCDであるとは限らないことをご了承ください。


目次
§1 ある程度の確認は誰でも必要
§2 OCDでの確認
§3 いろいろな強迫観念と確認のタイプ
§4 確認の症状から派生して起こる問題
§5 強迫的な確認の特徴と治療


§1 ある程度の確認は誰でも必要

夜寝るときや外出をする際、すこし念入りに確認をする習慣のある人は、少なくありません。では、このような人たちはみんなOCDなのでしょうか。決して、そのようなことはありません。
上記の例で挙げた程度ならば、どなたにでもありうる確認行為でこれだけで病気とは考えにくいものです。

学校や塾で先生からテストのときに、「誤字脱字などのミスがないか、答案を出す直前まで、確認をしましょう」といわれたことはありませんか。買い物をしたとき、お店によってはお客様が1万円札で支払いをすると「一万円札入りました」と声を出したり、おつりとして渡す紙幣をお客様と一緒に数えたりと、ていねいに確認をすることもあります。また、多くの生産工場では、商品を出荷する際に欠陥がないかの確認を決められたルールで行います。このように私たちはある程度の確認を日常的に行いながら生活をしているのです。

とくに、入試や資格試験を受けるときや大きな仕事を任されたときに、プレッシャーを感じ、緊張のあまりいつも以上に念入りに確認したくなることもあります。受験票を忘れていないか何度も確認するなど、多くの人が経験してきていると思います。

自分は試験などの本番に弱く、ほかの人より緊張しやすい心配性だと思っている人もいるでしょうが、試験などが終われば普通の生活に戻ります。このような場合は「緊張しやすい」という個人の気質や個性の範囲だと考えられます。


§2 OCDでの確認

OCDかどうかは、医師が診断基準などをもとに判断します。OCDの診断基準の要点は、前回の第106回コラム 「①順序・対称・完璧主義」で紹介した「ポイント1~4」と同じです。

OCDの患者さんにとっての確認はしたくてしているのではありません。過剰な確認行為により、精神的な苦痛を感じても、確認を怠ったことによって生じる不利益を想像してしまい、過剰な確認をしないではいられなくなるのです。したがって、「ほどほどにしろ」「気にするな」といわれても、自力でそこから脱出するのが難しくなってしまう感じなのです。
これらは確認の強迫症状としてよく見られるタイプです。このような人は次のような状況が苦手です。
買い物をしているとき、お店で確認をしたくなって、周囲の人から不審な目で見られたという経験談をOCDの患者さんからよく聞きます。記憶力に問題があるわけではないのですが、確認の症状が出ると、とたんに自分の行為や行動の記憶に自信がなくなります。だから、外出する際に鍵をしっかりかけたのに、鍵をかけたという行為に対して自信がもてなく、「もしかしたら、きちんとできていないのでは」という疑いが繰り返し生じてしまうのです。


§3 いろいろな強迫観念と確認のタイプ
OCDでは、頭の中に強迫観念が生じると、その嫌な感情から逃れ、安心を得るために、過剰な確認をすることがありますが、これは強迫行為となります。
このような強迫観念に襲われると、次に強迫行為に苦しめられます。本人が望んでいないのに確認を過剰に行ってしまうようになるのです。
また、不潔恐怖や順番へのこだわりが強いなど、ほかのタイプの強迫観念のために、確認行為をしてしまう人もいます。



§4 確認の症状から派生して起こる問題

確認の強迫症状をもつ人のなかには、確認を繰り返すことによって、体の感覚が敏感になってきて、正しい認識を得ることが難しくなる場合があります。たとえば、子どものころに同じ漢字を何度も書きとり練習しているうちに、それが本当に正しい文字なのか見え方がおかしくなったという経験をした人はいませんか。それと同じように、10回も20回も同じ確認を繰り返していると、どれが正しいのかわからなくなってくることがあります。

また、次のように、鋭敏な感覚による錯覚が生じる人もいます。その場合にみられる強迫観念と強迫行為は次のようなものです。
このように感覚が敏感になっていると、始終緊張しているために、身体も非常に疲れ、肩こりなどを訴える人も少なくありません。


§5 強迫的な確認の特徴と治療

火の元の確認を繰り返し行う人がいますが、実際に、ガスレンジに火がつけっぱなしなら、見ればすぐにわかるはずです。確認強迫の人は、ガスレンジを見て、火はついていないとわかっていても、その判断に自信がなくなります。そこで、ガスレンジから少し離れては、また戻って確認したり、「火は消えているように見えるけれど、もしかしたら自分が気づかないだけで、実はガスが漏れてしまうのではないか」などと疑い、じーっと気になるところを凝視してしまいます。

しかし、本当にガスが漏れるような器具でしたら、ほかの人も気づくはずです。ほかの家族が気にならないことを、その人だけが納得できずにいるのは強迫症状の特性といえます。ガス栓を閉めても「火が消えている」と確信がもてなくなっているのです。

OCDという病気をたとえると、本来は自動で温度調整できるエアコンが、温度を感じるセンサーが故障してしまったために、適温状態になっても、冷房もしくは暖房が稼働したままになっているようなものです。脳が「きちんとできた」と認識する機能が低下して、いつまでも確認をしたくなってしまう状態になると考えられます

脳画像を用いた研究から、OCDの人ではいくつかの部位の活動が通常よりも高まっていることがわかっています。[1]そして、それは重度であるほど、自分でコントロールすることが難しくなります。そのため、「きちんとできた」という感覚を求めて、納得いくまで確認していくと、止められなくなり、強迫症状の悪循環にはまってしまいます

OCDで確認のために凝視しても納得が得られない人は、まずそのような納得が不十分でしかない現状を受け入れることです。そして、時間をかけて凝視(確認)していても納得が得られないということは、ミスのない証拠くらいに思って、悪循環にはまらないようにしてください。

強迫症状の本質的な改善には、専門的な治療が必要となります。薬物療法を行い、薬の効果が得られれば強迫行為をしたいという衝動が和らぎます。その結果、執拗な確認行為から解放されるような気持ちになります。

認知行動療法の場合では、治療する先生や患者さんの状況によって具体的な治療法はさまざまですが、おおむね不安のような嫌な感情や「きちんとできていない」という不完全な感覚を打ち消すのではなく、それを受け入れ、不安や不快感を抱えたまま、今までの強迫行為とは逆の行為をしていきます。曝露反応妨害法では、強迫症状を引き起こすものと直面し、強迫衝動が起こっても強迫行為をしないようにすることを訓練します。認知行動療法の専門家によるトレーニングを積み重ねていくことで、次第に過剰な確認をしなくても平気になっていきます

確認強迫の人は、将来への安全や保障を過剰に求めてしまう傾向がみられます。しかし、あまり先のことを心配して、不安になるならば、今できることを考えて、行動に移してはいかがでしょうか。


*参考文献
[1]
上島 国利、OCD研究会[編集]「エキスパートによる強迫性障害(OCD)治療ブック」星和書店 (2010年)