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OCDコラム

OCDコラム

これって強迫性障害? それとも、ただのこだわり?
①順序・対称・完璧主義

「こだわりが強い」「完璧主義」といったように強迫性障害(OCD)と似た性格の人がいらっしゃいます。また、OCDの人にも位置や順序にこだわって、とらわれてしまい、強迫行為を完璧に行わないと気が済まない人がいます。今回は、性格のように元々その人がもっている特性と、OCDとの違いについて解説します。
なお、OCDかどうかの判断は、医師が診断基準に基づき、総合的に判断するものです。コラムのなかではいくつかの例を紹介しますが、これに当てはまるからといって、OCDや広汎性発達障害であるとは限らないことをご了承ください。


目次
§1 こだわりはOCDとは限らない
§2 対称、ペアで揃えたくなる人
§3 完璧主義と強迫性格
§4 先天的か後天的か
§5 治療が必要かどうか


§1 こだわりはOCDとは限らない

本や食器の収納方法、テーブルに物を置くときの並べ方などの行動に非常に細かいこだわりをもっている人がいます。少し例を挙げて考えてみたいと思います。
このようにこだわりがあり、行為が過剰であったからといって、OCDであるとは限りません。むしろ収納という点では、物を揃えることで、見た目も美しく、物を探しやすいというメリットがあります。書店や図書館で働く人は、このような細かい配慮をすることが、利用する人にも都合がいい面もあるでしょう。

OCDでも、物の置き方や順序に細かいルールを作り、それにとらわれるタイプの人がいます。(⇒第98回コラム)それらと、先ほど紹介したこだわりとは、米国精神医学会の診断基準である『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引き』[1]によると、いくつか異なるポイントがあります。

★ポイント1★
OCDは病気なので、本人は日常生活への支障や精神的な苦痛を感じています。そして、順序などへのこだわりに対しても、好きで行っているわけではないので、これらの行為による疲労も大きいのです。物の置き方などへのこだわりがどんなに厳密であっても、精神的な苦痛がなく、生活や仕事へも支障が生じていないのであれば、OCDとは考えにくいです。

また、本や食器などを揃えることが習慣になった人は、ルール通りに並んでいないと、気持ちが落ち着かず、直したくなります。たとえば、壁に掛っている額縁が斜めになっているとまっすぐに直したくなったり、朝、出かける前の準備がいつもと同じ手順でないと落ち着かないというものです。これらは程度の差こそあれ、誰にでもありえるものです。

★ポイント2★
OCDでは、自分で行為をコントロールすることが難しくなります。強迫行為の途中でいったん止めて、ほかの用事を優先したり、続きを明日に延ばすことが困難になる点が、こだわりや几帳面な性格の人とは違うところです。

OCDで物の置く位置などにこだわる患者さんには、次のような場合もあります。
家族からは、テーブルに物を置くときの位置にだけこだわっていると思われることも、OCDの患者さんの頭の中では、それ以外にもさまざまな考えが巡っているのです。


§2 対称、ペアで揃えたくなる人

OCDの人のなかには、「左右対称」や「ペア」「偶数で物を揃える」ということにとらわれる人もいます。

服や文房具を買うときに、1つしか必要ないとわかっていても、同じ製品を2つ買い揃えておきたいと思われる人もいらっしゃるのではないでしょうか。合理的なことではありませんが、それほど生活への支障や精神的な苦痛がなければOCDではありません。

★ポイント3★
何らかの行為の理由が、強迫観念や嫌な感情(不安など)を打ち消すことが動機となっていて、その行為が著しく過剰であれば強迫症状である可能性があります。強迫観念や強迫行為に費やされる時間がおおむね1日1時間以上であることがOCDの目安と考えられています。



§3 完璧主義と強迫性格

子どものころから、心配性、几帳面、細かいなどこだわりが強いなどの性格も、OCDと似ている面があります。

ただし、上記のような行為だけでは、必ずしもOCDというわけではありません。このような几帳面な記述方法は、時間がかかり、効率的ではない面もあります。しかし、本人が精神的な苦痛もなく、むしろ好んで行っているのなら、それはOCDではありません。
強迫的な性格を強迫性格ということもありますが、それとOCDとは区別されます。(⇒第94回コラム)また、完璧主義は、その完璧さを家族や部下など他人へ強要すると、問題が生じることがあります。

OCDの強迫行為は、重度の人ほど完璧に行います。それは、ラーメン職人が完璧においしいラーメンを目指すというような積極的な理由ではなく、症状によって少しのミスも許されないという不安や追い詰められた感じによるものです。少しでもミスをしたら、さらに強迫観念に襲われ、触れられない場所が増えたり、長時間かけて強迫行為をやり直さなくてはならないと思うと、強迫行為を完璧にせざるを得なくなります。


§4 先天的か後天的か

人間の性格は、生まれながらの要因もあれば、成長とともに徐々に形成されていく面もあります。先天的な要因が大きく、生活に著しく支障をきたすものに、広汎性発達障害*1)(⇒第82回コラム)があります。広汎性発達障害の人のなかにも、こだわりが強い人がいて、強迫症状と発達障害による特性との区別が非常に難しい場合があります。[2]
「レインマン」という広汎性発達障害の人が登場する映画がありましたが、そのなかで、自閉症の主人公が、歩行者用の信号が「進め」から「止まれ(歩くな)」になった途端、道路の真ん中で立ち止まって動かなくなってしまうシーンがありました。「止まれ」という文字を見たため、その場で止まってしまったわけですが、広汎性発達障害の人のなかには、このように言葉を字面通りに解釈してしまいがちな人がいます。また、「適当に置いて」の「適当に」などのあいまいな言い方や、言葉の裏にある意味や気持ちを察することも苦手です。

また、広汎性発達障害では、自分なりのルールを決めていることが多く、それに従った行動をすることで安心する傾向が強いという面をもつ人もいます。

他人の動作を真似ることが苦手な人もいれば、自分のルールやこだわりと少しでも食い違いがあると非常に不快に感じる人もいます。その不快な感情があまりに強く、自分では処理できなくなると、混乱したり(いわゆるパニック)、激しい抵抗を見せる場合があります。

一般に、広汎性発達障害では、このような特性を元々抱えていて、成長とともに自然に形成されたものであるため、自己との違和感はなく、病気という自覚もほとんどありません。ただし、これは個人差も大きく絶対的なものではありません。[1]

たとえば、小学校くらいまではそれほど目立たなくても、中学、高校になって、学校の勉強が難しくなったり、ほかの生徒との違いが広がることで、自分の特徴に気づくようになることはあります。

★ポイント4★ 
発症年齢が小児の場合もありますが、基本的にOCDは後天的な病気です。そのため、OCDでは、発症する前は気にならなかったことが過剰に気になるようになるので、個人差はありますが、「不要だとわかっていながらしないではいられなくなる」など、自分でもある程度おかしいと自覚することになります。

しかし、OCDになってから長い時間が流れると、病気以前の記憶が薄れ、何かに対して過剰に気になる生活が当たり前になっていることもあります。また、発達障害をもつ人が2次的に強迫症状を抱えている場合、発達障害によるものか、強迫症状によるものかの区別が難しいことがあります。

また、広汎性発達障害は、今年改定が発表される予定の米国精神医学会の『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引き』[1]では、自閉症スペクトラム障害と名称が変わる予定です。[3]

スペクトラムとは、境界がなく連続しているという意味です。自閉症スペクトラム障害も、知能的に問題がなければ、それ以外の特性では、どの程度以上なら障害だという境界を明確にすることが困難です。障害というのは、日常生活に著しく支障をきたし、社会への適応が非常に困難をきたすレベルで、他人や社会による支援が必要となる場合です。それ程でなければ、その人の個性と考えられます。


§5 治療が必要かどうか

こだわりやとらわれに対して苦痛に感じたり、生活に支障をきたしたりしていて、治したいと思っている患者さんには、受診をお勧めします。

今までとくに苦痛や支障を感じてこなかったのに、このような病気の存在を知ったせいで、病院へ行ったほうがいいか迷っておられる程度なら、急ぎ受診をする必要はないと思います。病名は、その人にレッテルを貼るためにあるわけではありません。治療はその人の苦痛を取り除くために行うものです。

また、このような問題で、本人はそれほど困ったと感じていないが、家族や周囲の人が困っている場合があるでしょう。OCDかどうかの判断が難しいこともあります。そのような場合、患者さん本人に直接会わないと対応しない医療機関も多いのですが、このような分野にくわしい精神・心理の専門家を探して、ご家族だけでも相談してみてはいかがでしょうか。


*注釈
(*1)
広汎性発達障害――発達障害のうち自閉性障害(自閉症)、アスペルガー障害など知能的に問題がない(高機能)場合も含まれる。対人関係での反応、コミュニケーションでの質的な障害、興味、行動、活動の限局された常同的、反復的な独特な様式での特性を抱える。

*参考文献
[1]
American Psychiatric Association[著]、高橋三郎、大野裕、染矢俊幸[訳]「DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断の手引 新訂版」医学書院(2003年)
[2]
広沢郁子、広沢正孝「児童の強迫症状とその経過―広汎性発達障害にみられる「強迫性―」精神科治療学(星和書店)Vol.22 No5 May 2007,p547-554
[3]
本田秀夫「DSM-5ドラフトにおける乳幼児期・小児期・青年期の精神障害」精神科治療学(星和書店)Vol.25 No8 Aug 2010,p1051-1058