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OCD体験者座談会2012 Vol.1(全3回)
私たちが強迫性障害を発症した頃

「小さなことが気になるあなたへ」では、OCDを体験した方にお集まりいただいて、座談会を開催しています。今年で4回目となる「OCD体験者座談会」では、頭の中だけの強迫行為に苦しめられた方、中学時代に発症したため、勉強や学校生活の面で病気の影響を大きく受けた方、OCDの発症の背景に幼少期のトラウマ体験があった方にご参加いただきました。さまざまな困難を経て、いまは病気の面影も消え、学生として社会人として毎日を過ごしていらっしゃいます。座談会の様子は3回にわたってお届けします。
座談会の司会進行は今年も精神保健福祉士の有園正俊さんにお願いしています。有園さんも約20年前にOCDを体験しています。

注意>>>>>

  • 座談会でお話されていることは、それぞれの方の実体験に基づいたものです。
  • 時代や地域により、治療法など医療の状況が異なる場合もあります。
  • ここで紹介されている対処法は、それぞれの方で条件が異なりますので、どなたにでも応用できるものではないことをご了承ください。決して自己判断で対処法など行われませんようお願いいたします。

目次
§1 中3で芽生えたOCD:頭の中を暗記した記憶がぐるぐる廻る
§2 鉛筆の芯の汚れが気になり、手を洗わずにはいられない
§3 自分の子どもなのにおむつが汚いと感じてしまって


§1 中3で芽生えたOCD:頭の中を暗記した記憶がぐるぐる廻る

有園

有園正俊さん:精神保健福祉士。OCDの患者さんを多くサポートしている

今日は「小さなことが気になるあなたへ」のOCD体験者座談会にご出席いただきましてありがとうございます。OCDを体験し克服された方にお集まりいただきました。今回は、少数派の症状の人にもご出席いただきましたので、前回までの座談会とは違ったことが聞けるのではないかと思っています。まずは、簡単に自己紹介からお願いします。

お茶
お茶と申します。年齢は21歳で、大学2年生になります。大学進学を機に一人暮らしをして1年半くらいになります。

有園
では、ヒロさん。

ヒロ
ヒロです。年齢は22歳になったばかりです。大学3年で、社会福祉学科で勉強していますが、今のところ、福祉関係の職に就こうとかとは考えていません。

みゆ
みゆです。年齢は49歳で、仕事は、結婚してからすぐ医療事務の資格を取りまして、30歳のときから病院に務めていて、受付業務や相談業務などをしています。いまもクリニックで仕事をしています。

有園
現在は、それぞれ大学で学んだり、お仕事をされたりしていますが、以前はOCDでつらい思いをされていたと思います。発症の頃のお話を聞かせてもらえますか。

お茶

お茶さん:頭の中の強迫行為に苦しめられた

僕が発症したのは、中学3年の8月、年齢でいうと14歳のとき(注:2005年頃)。まあ、このときは、“強迫性障害の芽が出始めた”という感じでしたね。うん、強迫の芽が。本格的な強迫性障害の症状が始まるのは、高校2年の8月、ちょうど2年後になるんですが……。強迫性障害の発端を感じたのは中3の8月です。

最初の症状としては、受験のストレスからだと思うんですが、自分の暗記したことがぐるぐるぐるぐる頭の中を反復するようなかたちの強迫性障害です。たとえばですが、風呂に入っている最中に明治時代の出来事を思い出した、とすると教科書の明治時代のことが書いてある部分すべてを、全部頭の中で思い起こしてしまう。

有園
それ、全部覚えているんですか?

お茶
はい。覚えているんです。

有園
それは、文章として思い浮かぶの? それとも、視覚的に浮かんでくるの?

お茶
どっちもです。明治時代のことって、教科書に書かれているだけでも結構なページ数があるんで、それを全部思い出すまでは風呂から出られないというか、次の行動に移れないといった状況でしたね。それで、1時間以上風呂から出られなかったりとかして。

有園
で、その間何しているの?

お茶
暗記の復習をしているんですね、頭の中で。ここまでくると、異常な行動なんですが、たとえば、明治維新だとかすると、1867年に大政奉還があって、1868年に五箇条の御誓文が出て、と、ばーっとそのあとのことが次々浮かんできてしまって。

有園
それは、勉強が好きでやっているのではなくて、本人としては苦痛なの?

お茶
苦痛です。もう、すごい苦痛です。やんなくていいレベルと思ってもやってしまう。

で、テストでも同様のことをするので、テストが時間内に終わらない。中間試験とかでも、1問目に取り掛かると、そこで問われていることに関連する事柄全部をばーっと思い出してしまう。だから、次の問題に移れないんです。

もう最悪。勉強した意味がないですよね。これが中学のときですね。これが強迫性障害の発端といえるものだったと思います。

有園
本格的な発症は高校2年でしょ。高校受験が終わってから症状は一段落していたんですか。

お茶
高校受験が終わったら一段落するものだと思っていましたが、しませんでした。こんな状態が高2の8月まで続きました。



§2 鉛筆の芯の汚れが気になり、手を洗わずにはいられない

ヒロ

ヒロさん:強迫症状が気になって勉強に集中できなかった

自分の場合、発症時期といわれると微妙なんですが、中2くらいですか(注:2004年頃)。ただ、これがきっかけじゃないかと思う出来事があります。それは学校の美術の授業で、鉛筆を使ってデッサンをしていたとき、手が鉛筆の芯で真っ黒になってしまっていたんですね。手が汚れたことに気がつかずに、無意識にその手で目をこするとか顔を触ってしまったらしく、鉛筆で顔が真っ黒になってしまったんです。そのことで周りの友だちからすごく笑われてしまって。自分は小さいことでもすごく気にするタイプなんで、それ以来、鉛筆の芯の汚れに対してすごい敏感になってしまって。ちょっと字を書いただけでも、すぐ手を洗いに行くようになってしまいました。最初は水で洗い流す程度だったんですが、だんだん石鹸を使い、強くこするようにしないと気が済まないようになって、洗う時間も長くなっていきました。

テストのときでも、手が汚れているんじゃないかと、そんなことが頭から離れないようになってしまって、それまでは割と成績もよかったんですが、これをきっかけに急激に成績が下がってしまって。ちょうど高校受験を控えていたんで、「なんでこんな大切な時期に成績が下がるんだ」と、親や学校の先生、塾の先生にもいわれて、余計に気持ち的に余裕がなくなったというか、それでどんどん悪化していったような気がしています。

有園
それで、高校はどうでしたか?

ヒロ
なんとか。第一志望は落ちちゃって、正直、あんまり行きたいところじゃなかったので、悔しかったし、当時こういう病気があることを知らなかったから、「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」と思うんですが、親にも説明できずにムシャクシャしていました。

有園
鉛筆の芯の汚れを気にしていたけど、シャーペンの芯はどうですか。

ヒロ
シャーペンもマジックも、ボールペンも、ペンは全般的にダメです。インクの類が全部だめでした。

有園
手の洗い方がだんだん念入りになっていったみたいだけれど、学校でもそんなふうに洗っていたの? 石鹸のない洗い場では困らなかった?

ヒロ
そうですね。基本、どこでも念入りに手洗いしていました。学校は蛇口のところにネットの中に入って固形の石鹸がぶら下がっていましたから。学校では石鹸がなくて困ったことはないんですが、どうしてかは、よく覚えていないんですが、なにかの受付で自分の名前を書かされることがあって、そのあとトイレで手を洗おうと思ったんですが、そこのトイレには石鹸がなかったんで、駅ビルまでわざわざ行って石鹸で手を洗ったこともありました。

有園
そんなに時間かけて手を洗っていたら、学校で友だちから何かいわれなかった?

ヒロ
なるべく人目につかないところを探して洗っていましたが、ときどき誰かに見られちゃったりすると、「お前、すごい潔癖症だな」といわれたりしました。

有園
授業中は、気になってもすぐに手を洗いに行けないでしょ。それで支障をきたしたことはありますか。

ヒロ
当時は、そんなことが気になってしまって、授業の内容とかが全然頭に入らなかったです。

有園
鉛筆とかペンの汚れ以外で気になることはなかったですか。

ヒロ
最初は鉛筆とかペンだけだったんですが、だんだんトイレとかも気にするようになってきたし、印刷物などでもインクの汚れが手に付くんじゃないかと気になるようになりました。そして、手を洗わないと気が済まないようになりました。

有園
1日のうちでどれくらい強迫の症状に時間を取られていたように感じますか。

ヒロ
中学のころはまだまだ軽い感じだったので、1日4時間か5時間って感じです。



§3 自分の子どもなのにおむつが汚いと感じてしまって

みゆ

みゆさん:結婚生活にストレスが多く、出産後発症

私は年齢的に25歳くらいだったと思います(注:1988年頃)。22歳で結婚して、夫の母親とうまくいかなくて、夫もマザコンで母親の言いなりだったので、いつも喧嘩をして家庭がうまくいかず常にごたごたしていたんです。それまで自分ではそれほど神経質ではなく、むしろズボラなほうだと思っていたんですが、24歳で長男を出産して、1年後くらいから、おむつが汚いと感じるようになってしまったんです。「なんで、自分の子どもの排泄物がこんなに汚いと思ってしまうんだろう」と不思議だったんですが、だんだんエスカレートしていって、おむつをつけた息子が動いたところは汚い、部屋も家のなかも汚いと思うようになってしまって。

有園
排泄物そのものを汚いと思うのは、別に不思議じゃないんだけど、おむつそのものが汚いと感じたの?

みゆ
当時のおむつは横モレとかしやすくて、息子の場合も横モレをして、ズボンが湿っているような気がしたんです。そのまま、動き回るとなんとなくおしっこを家じゅうに付けて回っているような気がして。

有園
「付けて回っているような気がした」というのは、ほかの人はそうは感じていなかったみたい?

みゆ
はい、そうですね。自分でも「なんだろう、自分はおかしくなっちゃったのかな」と考えました。その頃は、まだ強迫行為はなかったのですが、自分の子どもの排泄物を汚いと思うこと自体が、自分で許せなかったという感じです。「親なのに」と自分を責めていました。姑や夫とのいざこざによるストレスもあって、どんどん症状が悪化していきました。

有園
おむつはひんぱんに替えていましたか。子どもにあたったりはしなかった?

みゆ
ひんぱん……、あまり記憶がないですが、替えていたかもしれません。子どもに対しては、暴力とかはしなかったんですが、「この子がいなかったらよかったのに」と思うことはありました。車に子どもを乗せて、「このまま二人でどこかに突っ込んでしまおうか。そうしたら楽になれるのに」と思ったこともありました。そういう生活から逃れたくても逃れなかったんです。

有園
育児中の人がOCDになると、つい、子どもにあたってしまうということが割とあるんです。だから、ちょっと聞いてみたんです。

みゆ
息子が小さいころはあたったりしませんでしたが、幼稚園ぐらいになると、たいして悪いことでもないのに、叱るときに、ほっぺたをつねったりしたことも何度かありました。

有園
姑との間のトラブルって、どんな感じのものがありましたか。

みゆ
新婚旅行から帰った日から「どこに泊まったの?」とか行動を詮索されることが続いて、ああしろ、こうしろって、とにかくうるさかったんです。同居はしていなかったんですが、休みのたびに「帰ってこい」と強くいわれ、その程度が甚だしくて、それがすごく嫌だったんです。姑は私に主人を取られたと思っていたのか、私に皮肉ばかりいってきました。主人は姑の言いなりだったので、そんな主人にも嫌気がさしていました。

そんな状態が1年くらい続いて、長男が生まれたんですが、そのときに姑から「この子はうちの孫だから、あなたの子どもではない。あなたの自由にはさせないよ」といわれました。主人はまったくかばってくれなかったものですから、姑と主人に対する嫌悪感のスイッチがここで更に強く入ってしまったという感じですね。

有園
このことを誰かに相談したり話したりしなかったの?

みゆ
実家の母には話しました。実家の母は私の話に同調し、輪をかけて姑や主人のことを悪くいいました。今から思うとこれもよくなかったのかなと思います。

友だちにはいえませんでした。以前は友だちが多くて、よく家にも遊びにきていたんですが、発症してからは、友だちに自分のそんな姿を見せたくなくて、自分から離れていきました。症状については母にも話せませんでしたので、自分をさらけだせる人というのがいませんでした。夫に話しても理解してもらえず、けんかに発展してしまって、その怒りが強迫行為に向かわせるという悪循環になりました。そして、怒りの矛先が家になり、「もうこんな生活、嫌だ、嫌だ、嫌だ」と心の中で叫びながら、家じゅうを掃除するようになっていきました。きっと、嫌悪感を払拭するのが、掃除しかなかったのでしょう。

有園
3人の発症当時の時代や立場、状況はそれぞれ違いますね。しかし、3人とも、発症当時、抱えていた悩みを周囲の人に話して理解してもらうのは、とても難しかったのだろうと思います。このような症状も2、3日で済めば、大したことないんですが、これが、長期間、続いていくことで、強迫症状になっていき、自分だけで改善していくことも難しくなっていくわけです。

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強迫性障害(OCD)という病名は、自分や家族がかかって初めて知ることが多いのではないでしょうか。発症年齢の平均は、複数の調査から20歳から20代中ごろ、男性のほうが女性より発症の平均年齢は若く、10代で発症する割合も高い傾向があります [1]。最近では、中学生でもインターネット等で病気について調べる人もいますが、みゆさんが発症した頃は、インターネットが普及する前で、さぞ困惑されたのではないかと思います。

思春期は、心身ともに大きく変わる時期で、精神的に不調をきたして、不登校になってしまう人は珍しくありません。また、女性の場合では、生活の変化やホルモンの影響から、結婚、妊娠、出産、育児という時期をきっかけに、精神の不調が現れることがあります。周囲の人は、10代は若くて元気、結婚・出産は幸せというイメージが先行しがちなため、よけい悩みを話しにくい面もあるのですが、実はこのようなときはOCDに限らず精神的な問題を抱えやすくもあるのです。(有園正俊)

次回は、この後の症状の変化などを中心に体験を語っていただきます。


*参考文献
[1]原田誠一[編]「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版 (2006年)