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OCDコラム

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OCD(強迫性障害)が「治る」ということ、そして再発予防


OCDは、適切な治療(薬物療法、認知行動療法)を行えば、改善が期待できる病気です。 しかし、一度症状が改善した後に、再発することもあります、また、症状が軽減した後も、しばらく薬を飲み続ける必要があります。 そんなとき、自分はいつまで飲み続けるのかと不安に思う人もいるのではないでしょうか。

そこで、今回は、症状が改善した状態を保ち、再発を防止するための情報をまとめました。症状が改善したOCD体験者の方々にも、日ごろ心がけていることを伺いましたので、参考にしてください。


目次
§1 OCDが治るとは?~寛解について
§2 再発しやすい状況とその対処
§3 薬はいつまで飲むの?
§4 体験者の声
§5 まとめ


§1 OCDが治るとは?~寛解について
一般にOCDの治療では、完治(病気が完全に治ること)を目指すのではなく、「寛解(かんかい)」といって、症状が完全になくなったとは限らないが、日常生活に支障をきたさない程度にまで改善した状態を目指します。

このように書くと、OCDの患者さんのなかには、「どの程度、症状が残ってしまうのだろう」「一生、強迫症状を抱えなくてはならないなら、医療機関に行っても意味がないのでは?」などと、治療する前から将来のことを考え過ぎてしまい不安になる人もいます。

しかし、近視の人が、視力そのものが回復しなくてもメガネやコンタクトを使用することで、日常生活にそれほど支障をきたさないで生活できる状態というのはあるものです。
OCDの主な治療は、薬物療法、認知行動療法です。OCDの治療に、メガネのような矯正する道具は使いませんが、症状が改善した後も服薬をしばらく続け、自分の病気への対処法をしっかり身に着けることで症状が残っても病気とうまく付き合っていけることはあります。

薬物療法では、SSRIやクロミプラミンが主に使われます(*1)。それによって、約半数(40~60%)の患者さんに効果が見られ、症状の改善率は5割前後といわれていますが、効果の現れ方には個人差も大きいようです。それによって効果が得られない人には、抗精神病薬(*2)を少量加えることによって改善がみられることもあります。[1]しかし、薬物療法にも限界があり、再発される方が少なからずいます。[2、4]

OCDにおける認知行動療法の中心となる曝露反応妨害法では、およそ60~90%の改善率といわれており[3]、なかには、日常生活にほとんど影響がないくらいにまで改善する人もいます。また、認知行動療法を終了した人の再発率は概ね低いとのことです。[4]しかし、日本では、まだOCDに対する認知行動療法を適切に行える環境が整っておらず、せっかく患者さんが受診しても、改善の度合いにかなりの違いが見られることもあります。

そして、OCDは治療によって症状がある程度改善しても、強迫行為の習慣が残っていると、強迫観念との悪循環によって、症状が次第に強化されやすく、そのままの状態を維持することが難しいという特徴があります。

そのため、強迫性障害の治療では、症状の改善を維持し、再発を予防するためのフォローアップ・プログラムが大切となります。

◆ポイント 「治る」ことへの考え方
治療によって、どの程度治るのかは、患者さんの状態や環境、治療法、治療者によってさまざまです。「治る」ということは、あくまで結果であって、受診前に患者さんや家族が予測できるものではありません。登山に出発する人に、頂上までたどり着けると100%保証できないのと同じです。

OCDの患者さんは、将来の保証を求めすぎたり、先入観が強い傾向があり、治療に踏み出せないことがあります。しかし、100%頂上に行ける保証はなくても一歩一歩山を登り始めることで、頂上に近づけるように、治療によって、いくらかでも改善の可能性があるのなら踏み出してみることが大切です。


§2 再発しやすい状況とその対処

強迫症状は、仕事や家庭生活で重い責任を課せられたり、大きな困難に出会ったり、親しい人が病気になったり死亡したなど、強いストレスプレッシャーにさらされた場合に、再発しやすくなります。ほかに、不安精神的な疲労にも影響されやすいといわれています。また、認知行動療法が十分でなかったり、自分の問題や曝露(エクスポージャー)の課題にきちんと向き合えなかったりした人も再発しやすいといわれています。[5、6]

薬物療法で主に使われる抗うつ薬は、服用していくと、効果が得られる人では、何となく強迫的な衝動が減った感じがします。しかし、日常生活では、気分やストレスの変化はあるもので、それらは少なからず病気に影響を与えます。そのため、ストレスなどをきっかけに、OCDが再発することがあります。

認知行動療法のプログラムを終了した後でもフォローアップが行われることがあります。また、そのようなフォローアップ・プログラムや認知行動療法を受けたことがない人は、次の点を参考にして、再発予防をしてください。

◆ポイント 再発を防ぐために [5]

1) OCDのしくみを知る
OCDは、強迫観念と強迫行為の悪循環によって、症状が強化されていきます。再発を防ぐには、その悪循環のしくみを知り、そこに陥らないように自分で対処できるようになるとよいのです。一般的な認知行動療法では、最初に心理教育を行い、そこでは、この悪循環について学びます。当サイトにも、心理教育のページがあるので参考にしてください(OCDの治療法>OCDの心理教育)。

2) 強迫的な行為を一度してしまうことと、再発とは違う
再発とは、症状が治療前と同じくらいのレベルに戻ることと定義されています。強迫的な行為を一度くらい行ってしまっても、再発といえるレベルに戻るには、ある程度の期間がかかるわけです。ですから、確認を余分にしてしまったり、体を過剰に洗ってしまっても、あせらずに、少し気分が落ち着くまで待ってください。強迫的な行為をしたとしても、その行為が習慣となってしまわないように、コントロールできればいいのです。


3) 嫌な考えがよぎっても強迫観念とは限らない
「(肉眼ではわからない程度だが)汚れがついているように思える」、「確認がきちんとできていたか気になる」「縁起が悪い想像をしてしまった」という考えは、OCDではなくても、頭をよぎることがあります。このような考えは、自分が望みもしないのに意識に入ってくるため侵入思考と呼ばれ、誰にでもあるのです。たまに頭によぎる程度なら、強迫観念ではないので、あまり真に受けて恐れないでほしいのです。あせって何とかしなくてはという思いにかられて行動すると、そのまま強迫行為を行ってしまいがちです。

4) 完璧な考え方は強迫症状に影響を与えやすい
物事を、「いいか、悪いか」「きれいか、汚れているか」のいずれかでしか判断ができない人、あいまいで不確かなままにしておくことができないという完璧主義な考え方は、再発にも影響を与えやすいそうです。多くの人がいい加減に放っておける場面なら、なるべくそれにならって放っておけるとよいのです。


§3 薬はいつまで飲むの?

OCDでは、症状が十分に改善されれば、服用をやめることができます。しかし、症状が改善したような気がして、患者さんの判断で勝手に止めると、中止後症状(*3)が起こり苦しむことがあります。服用に関しては、必ず医師の指導に従ってください。

参考までに、海外でのOCDの治療ガイドライン[7]に書かれている、薬物療法の一般的な減量の過程を紹介します。治療によって強迫症状が改善したら、その効果をより強固にする期間として3~6カ月を設定し、月1回程度の外来診療で継続して様子をみます。それによって、改善された状態が1~2年間(維持療法の期間)、安定して続けば、薬を減らすことを検討します。

SSRIのような抗うつ薬の減量は、月1回くらいの外来のたびに、医師が経過を観察しながら、段階的に行い、最終的にはゼロにしていきます。このように、医師が十分な期間をかけて様子をみて、患者さんがその間、服薬を続けることも再発防止につながります。

実際には、抗うつ薬以外の薬が処方されている場合やOCD以外の精神疾患を併発している場合もあり、患者さんの状況によって異なります。だからこそ、医師の指導は重要です。


§4 体験者の声

2011年に行われたOCDの体験者による座談会(コラム第89回第90回第91回)に参加していただいたテツさんとキャロットさんに再発について、お話を伺いました。2人とも、OCDの治療を終了した(寛解)後も、再発の心配はあったそうです。それに対し、どのようなことを心がけているのか聞いてみました。

■テツさんが心がけている再発防止策
考えすぎない
ある人から「仕事に行ける!」ことは「広い意味で完治したと思った方がいいんだよ」と言われ、そのように考えるようにしています。また、「再発したらどうしょう…」と思うことは不安な考えを招きやすいので、「なったらなったで、また以前の先生に会いに行けばいい」と楽に考えるようにしています。
「まあ、いいや」主義でいく
「汚い」という考え方の回線を使うのでなく、「まあ、いいや!」という回線を太くするよう、考え方を少し変えるようにしています。
考え方にいくつかの選択肢を用意する
以前は「短期の目標、長期の目標」を立てていましたが、長期目標が達成できなくても、短期目標が達成できたことを優先する考え方もあるのだと気づきました。「絶対こうだ! こうしなければいけない…!」と完璧主義の考えよりも、いくつかの選択肢を持とうと心がけています。
うまくいかないことを病気のせいにしない
去年の座談会でわいこさんが「何もしないのを病気のせいにしていた」と言ったことを聞いたとき、心にグサッときて、今は、うまくいかないことを病気のせいにしないように心がけています。
休日の過ごし方にメリハリをつける
休日が2日あったら、1日は外出して、何も考えずリラックス出来る事(趣味など)をして、もう1日は家でのんびりするようにしています。

■キャロットさんの心がけている再発防止策
完璧を目指さない
カウンセングで学んだ、天秤計でメリットとデメリットを考える事です。知りたい内容が出てきたら、必要に応じて調べたり、聞いたりしますが、「60%で良し」とするようにしています。
対人関係を悪化させない
対人関係が悪化しないようにしています(なかなか難しいですが)。職場では、独断で判断しないで、相談して決めるとか、ストレスをためないように、人に話したりするほか、自助グループにも参加しています。


§5 まとめ

OCDの患者さんのなかには他の精神疾患を併発している人が、約半数います。[8]併存疾患にはさまざまなものがありますが、それによって治療期間が長くなったり、生活への支障の度合いが増すことがあります。また、社会復帰や再発に影響を与えることもあります。[9]

小児・思春期のOCDでは、併存しやすい疾患も成人とは異なり、チックや発達障害などを抱えている人の割合が増えます。そのような疾患を併存している人のほうが、薬物療法を行っても、再発しやすいという報告があります。[10]

また、ストレスやプレッシャーが、強迫症状に影響を与えてしまうことはありますが、患者さんのなかには、それを理由に、家族を強迫行為へと巻き込んでしまう人もいます。たとえば、不潔に感じることがストレスになるという理由から、家族が手を洗わずに触ってもよい場所を制限したり、自宅に家族以外の人(親戚や電気修理の人)が入ってこないよう強要したりすることです。家族の強迫行為への巻き込みは、症状を悪化させる要因になるので、患者さんも家族も正しい知識をもつことが大切です。

最後に、現在、強迫症状が改善している方でも、治療中にさまざまな困難があったという人もたくさんいらっしゃるでしょう。だからこそ、症状の改善が得られたら、できるだけその状態を維持してほしいと思います。再発の心配よりも、部分的であっても症状から解放された喜びを忘れずに、そして、それによって得られた時間を大事にしていただきたいと思います。


*注釈
*1 SSRIやクロミプラミン――SSRIは、選択的セロトニン再取り込み阻害作用をもつ抗うつ薬の総称。OCDに健康保険での適応があるSSRIは、デプロメール(ルボックス)、パキシル(いずれも商品名)。クロミプラミン(アナフラニール)は、それ以前に開発された三環系の抗うつ薬だが、セロトニンに作用する。

*2抗精神病薬――強度の不安、興奮、妄想・幻覚などの精神症状を抑えるはたらきがある薬剤。統合失調症のほか、多くの精神疾患で使われる。

*3中止後症状――精神に作用する薬をある程度の期間、毎日、服用していた場合、それを急に減らす、もしくは中止することによって生じる一過性の心身の不調。めまい、ふらつき、頭痛、不眠、吐き気、不安のほか、イライラしたり、怒りっぽくなったりと感情が不安定になることがある。[11]


*参考文献
[1] 上島 国利 (編集代表), OCD研究会 (編集協力)「エキスパートによる強迫性障害(OCD)治療ブック」星和書店 (2010年)
[2] 青山洋、宍倉久里江、伊川太郎、大坪天平、三村將、上村国利「OCDの薬物療法-最近5年のOCD外来における検討-」OCD研究会[編]「強迫性障害の研究1」星和書店(2000年)p23-31
[3] 山上敏子「強迫性障害の行動療法」OCD研究会[編]「強迫性障害の研究1」星和書店(2000年)p83-95
[4] Hiss, Hella; Foa, Edna B.; Kozak, Michael J. ‘Relapse prevention program for treatment of obsessive-compulsive disorder.’ Journal of Consulting and Clinical Psychology, Vol 62(4), Aug 1994年, 801-808.
[5]James Claiborn,PhD,ABPP, ’Relapse Prevention in the Treatmnet of OCD’International OCD Fundation
[6]エドナ・B・フォア、リード・ウィルソン[著]、片山奈緒美[訳]「強迫性障害を自宅で治そう!」VOICE(2002年)
[7] John S. March、Daniel Carpenter、Allen Frances、David A. Kahn[著]、大野 裕[訳] 「エキスパートコンセンサスガイドライン 強迫性障害(OCD)の治療」ライフサイエンス (邦訳1999年)
[8] 原田誠一[編]「強迫性障害治療ハンドブック」金剛出版(2006年)
[9] Jonathan D. Huppert, H. Blair Simpson, Kore J. Nissenson, Michael R. Liebowitz, and Edna B. Foa’ Quality of Life and Functional Impairment in Obsessive-Compulsive Disorder: A comparison of patients with and without comorbidity, patients in remission, and healthy controls’ Depress Anxiety. 2009年; 26(1): 39–45.
[10] Daniel A. Geller, Joseph Biederman, S. Evelyn Stewart, Benjamin Mullin, Colleen Farrell, Karen Dineen Wagner, Graham Emslie, and David Carpenter.’ Impact of Comorbidity on Treatment Response to Paroxetine in Pediatric Obsessive-Compulsive Disorder: Is the Use of Exclusion Criteria Empirically Supported in Randomized Clinical Trials?’ Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology. July 2003年: 19-29.
[11]日本うつ病学会「SSRI/SNRIを中心とした抗うつ薬適正使用に関する提言」2009年