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OCDの会 第1回市民フォーラムレポート(1)
回復した仲間を知って治療意欲がわいてきた


去る10月23日、熊本市にあるOCDのサポートグループ「OCDの会」が、「第1回市民フォーラム」を開催しました。同会は、日本で初めてと言ってよい、OCDの患者自身によるOCD患者と家族のためのサポートグループです。

これから3回にわたり、当日の会での発表などをご紹介しながら、OCD患者の現状をめぐるさまざまなテーマを取り上げていきます。
第1回は、同会会長・児玉政美さんの発表から、サポートグループを作るに至ったきっかけや、患者会活動の意義などについてご紹介します。


■OCDの会 第1回市民フォーラム プログラム
  1. OCDの会からご挨拶 会長/児玉政美さん
  2. 招待講演 大阪市立大学医学部精神科 松永寿人先生
  3. 患者体験談
  4. 家族体験談
  5. 国立病院機構菊池病院 治療プログラム紹介 原井宏明先生
  6. Q&A



●私はOCD患者。今は普通に働いています。

「私自身がOCDの患者です」
数十人の参加者を前に、壇上に立ってそう述べた児玉政美さんは、いかにも都会的な明るいママさん、といった印象の女性。一目見て、誰も彼女がOCDの患者だとはわからないことでしょう。
「今はこうして笑って話せるまでに回復して、現在は投薬による治療だけを継続しています。一般企業で、事務員として普通に働いています」

「OCDの患者は、自分が病気だと気づいているので、まったくの他人に対しては普通に接することができます。ですから、同僚は誰も私がOCDであるとは気づいていません。外に出て人の目にさらされることが、私にとっては行動療法のようになっているのかもしれません」



●このつらさ、苦しさは、誰にもわかってもらえない。

児玉さんがOCDを発病したのは、結婚をして子どもを産んでからでした。毎日お料理を作る前に手を洗っていましたが、あるとき、その洗った手で作った料理を食べると、子どもが病気になるような気がしたそうです。そこで、何度も繰り返し手を洗うようになりました。

「だんだん料理をする前に、何度も何度も石鹸を使って手を洗わないと、野菜や食器など、子どもが直接触るものに触ることができなくなりました。料理の前の手洗いに時間がとられて、料理を作ることもできない。しまいには台所に入ることが怖くなり、毎日泣いてばかりいました。自分がおかしくなってしまったのではないかと自覚したのはその頃です」

児玉さんは、家族の食事を作るという日常の行動がスムーズにできなくなりました。
「子どもに食べさせるという当たり前のことにとりかかる前に、手が真っ白になるまで、何十回とわからないほど洗い続けなければならない。つらかった。どうしてこんなおかしな行動をしてしまうのかと、いつも自分を責めていました」

「どうして台所がこわくなったのか、家族にもわかってもらえない。誰でもいいからわかってほしい、と思いました」
OCDの患者は、身近な家族に強迫行為の確認を求めることがあります。児玉さんもご主人に「私の手、きれいになった?」とよく聞いていました。だんだんその回数が多くなり、ご主人が「きれいだよ」と言っても「まだおかしいよね」と手洗いを繰り返して、やめられなくなっていました。

「OCD患者は、自分でも一回洗えば手はきれいになるという常識はわかっているのです。でも、どの手洗いが正しい洗い方なのか、“ここまで洗えば大丈夫”というマニュアルのようなものを求めてしまうんですね」
周りに「何をそんなに心配するの?」「大丈夫じゃない」と言われると、それが自分でもわかっているだけに、とてもつらかったと言います。



●OCDという病気があることを知らなかった。

「私自身、病気になって苦しんで、OCDという病名があるということを初めて知りました」と語る児玉さん。現在の病院(国立病院機構 菊池病院)にかかる前に、6つもの病院を受診しました。
「精神科がどういうところなのか、情報もありませんでしたが、とりあえず電話帳で病院を探して、自宅から離れた目立たない病院を探し、そこで助けてもらおうと思いました。OCDという病気はどういう病気か、どういう治療法があるのか。治療によって治る病気であることも、治療を受けて初めて知りました」

「OCDについては、社会的理解も不十分です。精神科の病院は数多くありますが、OCDの治療をしてくれるところがまだまだ少ない。特に、行動療法を受けられる病院はとても少ないのです。私は今の病院で、やっとこんなふうに人前で話ができるまでに回復できました。そんな病院にめぐり会えた私はある意味、とてもラッキーだと思います」



●あの人が治るなら、私だって治るはず。

そんな児玉さんも、簡単に治療に入れたわけではありませんでした。行動療法では、患者が最も恐れている事や物にあえて触れさせ、強迫行為を制限する「エクスポージャーと儀式妨害」(暴露反応妨害法とも言う)という方法を取る場合があります[行動療法]。
「ここまで苦しんできたのに、まだこれ以上苦しまないといけないのか。どうしてそんなにひどいことをさせるのかと思いました」

ある日、児玉さんは、同じOCDの患者たちと一緒にグループ治療を受けました。その中に、治療の間、ずっと泣きながらうつむいている人がいました。強迫行為に疲れ果てて、顔も上げずに泣いている女性。その彼女に、担当医は本人が一番嫌だと思っていることをささやき続けます。
「どんどん追い込んでいって、なんてひどい治療なのだろうと思いました」

1カ月後、児玉さんは、その女性と病院で出会いました。彼女のほうからニコニコして「お久しぶりね」と声をかけてくれたそうです。
「あの疲れ果てて泣いていた彼女が、全然別人になっていました。生き生きとして、お化粧もして。人ってこんなに変われるものか! と衝撃を受けました。この人が治っているんだ。だったら自分も治れるかも、と。その人と出会って初めて、自分も治るんだと決心をしました」

同じ病気で回復した仲間を知ったことが、児玉さんを積極的に治療に向かわせる一番のきっかけになったのです。



●仲間と情報交換し、OCDへの理解を広げていきたい。

「私と同じように、OCDに悩み苦しんでいる方はたくさんいるはずです。また、自分自身がおかしいと気づいても、受診をする機会のない方が、たくさんいるのではないでしょうか。そんな方々に、この病気は治る病気ですよと、伝えたい」
2004年4月、児玉さんはそんな思いから、仲間と「OCDの会」を立ち上げました。会の連絡先は、児玉さんが治療を受けている菊池病院にあり、会員は毎月1回、病院内の部屋で月例会を開催しています。

「大きなことを言うようですが、精神疾患への偏見を少しでもなくしていき、OCDになった人が受診をしやすくなったり、家族も積極的に本人の治療を応援できるような、そんな世の中になっていってほしいんです」と児玉さん。

この市民フォーラムで、家族代表として発表をした会員の一人は、このように言っています。
「OCDという病気があり、それに苦しむ患者がいるということは、ほかの人に言ってもなかなかわかってもらえないことです。こういう会があって、自分の気持ちをさらけだすことができるところがあるということは、本当にいいことだと思います」

OCDの会ホームページ
http://ocd-2004.hp.infoseek.co.jp/