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薬物治療中の人はセントジョンズワートを使ってはいけない!


うつ病や抗うつ剤について調べたことがある人なら、「セントジョンズワート」というハーブのことはすでにご存知ですね。「セントジョンズワート」は別名セイヨウオトギリソウ。ギリシャ、ローマの時代からヨーロッパで切り傷の手当てなどに使われてきた薬草です。1980年代から、ドイツの研究者たちが、うつ病に対して効果があるという研究を発表し、抗うつ剤としても使われるようになりました。



90年代には臨床試験も複数行われ、そのなかには、抗うつ剤の「プロザック」と比べて、抗うつ効果がほとんど同じという結果になったという比較試験もありました。今ではセントジョンズワートの有効率は55%というのが定説になっています。特に、軽度から中度のうつに対して効果があるとされ、ドイツでは医師が普通に患者に処方しています。

ところが日本では、セントジョンズワートはサプリメント(健康食品)として紹介されました。困ったことは、医薬品として扱われていないので、通信販売などで購入して勝手に利用する人がいることです。そこで心配されるのが、他の薬との併用による副作用です。

セントジョンズワートと他の薬の飲み合わせによる副作用については、厚生労働省からの通達もあって、比較的よく知られるようになってきました。セントジョンズワートは肝臓で薬物代謝を促進する酵素を誘導するので、特定の医薬品の効き目を悪くしたり、効きすぎによる副作用を起こしたりします。特に知られているのは、動脈硬化や冠動脈性心臓病の人によく処方される血液凝固阻止剤、ワーファリンとの飲み合わせです。

では、OCDで薬物治療を受けている人が併用してはいけない理由は? まだ研究報告は少ないのですが、アメリカで1998年に発表された研究では、抗うつ薬の塩酸トラドゾンと拮抗作用を起こす、つまり互いの効き目を悪くすることが報告されました(注1)。同じ年の研究で、SSRI抗うつ薬であるパキシルとセントジョンズワートを10日間服用した後に、船酔い症状、昏睡、嘔吐、疲労感などの症状を呈したという症例が報告されています(注2)。

海外のハーブサプリメントを並行輸入して販売しているサイトなどでは、「セントジョンズワートには副作用はほとんどありません」などとうたっているものもありますが、これは間違いですから注意してください。「ハーブだから」あるいは「自然薬だから」副作用がないだろうと考えるのも、誤った思い込みです。お薬は、医師や専門家に作用や効果を診てもらいながら服用するのが一番安全。治療中の人は、くれぐれも自分だけの判断で使用しないように気をつけましょう。

参考文献:板倉広重・監修『最新サプリメント・ガイド』(日本評論社)
資料協力:佐藤章夫(医学博士・米国公認臨床栄養士)

注1 Demott K. St.John's wort tied to serotonin syndrome. Clinical Psychiatry News 1998;26:28
注2 Gordon JB. SSRIs and St.John's wort: Possible toxicity ? Am Fam Physician 1998;57:950