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OCDコラム

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OCDの人はうつ病になりやすい?


ストレスの多い現代、注目されている心の病が「うつ病」です。
心身ともに健康だと思っている人でも、ある素因があれば、恋人と別れたり、家族を亡くしたり、就職試験に落ちるなど深い悲しみや挫折感を発病要因として精神的な抑うつ状態に陥りやすいものです。うつ病は10人に1人が一生に一度はかかる心の病と言われます。

症状としては、気分が落ち込み、何事にもやる気が出ず集中できない、自分を責めるなどの精神症状のほかに、眠れない、食欲がない、頭痛、胸やのどがつかえるような感じといった身体症状が出るのが特徴です。その程度も、十分な休養によって快癒するものから、長期の通院・治療が必要になるものまでさまざまです。重症の場合、心配されるのは自殺の危険が強まることです。

実はこんなうつ病と、OCDが同一の患者に併存するというデータがあります。下記の表を見てもわかるように、OCDと併存する精神疾患のうち、最も多いのがうつ病なのです。海外の調査には、OCD患者の3分の1がうつ病の診断基準を満たしているというデータもあります(Rasmussen and Eisen, 1992)。

強迫観念に悩まされ、毎日長時間を強迫行為に費やさなければならないOCD患者が抑うつ状態に陥りやすいというのは、容易に理解しやすいことですね。手を洗ったり、確認するなどの強迫行為に時間とエネルギーをとられ、生産的なことをしたり、家族や友人と楽しく過ごす時間が減ってしまうわけですから。

また、うつ病とOCDには共通した脳の機能異常も想定されています。OCDの生物的要因として、神経細胞と神経細胞の間にある神経伝達物質のひとつ、セロトニンが関与しているという説が有力です。⇒OCDの原因「セロトニン仮説」
ところが、うつ病にもセロトニンとノルアドレナリンという2つの神経伝達物質が関与しているということがわかっています。うつ状態の患者は、セロトニンとノルアドレナリンの働きによって機能する神経経路が不調になっています。

セロトニンを放出する神経が脳全体を覚醒させるのに対して、ノルアドレナリンを放出する神経は、不安や恐怖と密接に関係しています。この2つは互いに複雑に制御しあっていると考えられていますが、まだそのメカニズムは解明されていません。わかっているのは、脳内のセロトニン量が減少すると、うつ状態に陥りやすいということです。

脳内神経伝達物質の働きは、まだ完全に解明されてはいませんが、OCDという心の病気の原因をつきとめるために、欠かせない研究分野であることは確かです。心に起こる強迫観念は非合理なものであっても、いつかはそのメカニズムが合理的に解明され、治療に役立てられる日が来るはずです。

なお、OCDにはセロトニンに対する効果が優位な抗うつ薬、たとえばSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効です。わが国では、SSRIの一種であるフルボキサミンという抗うつ薬が、厚生労働省よりOCDに対して使用が許可されています(保険適応)。
OCDと共存する精神疾患(生涯有病率、%)